第一話 朝食はステーキに限る

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 水丘商店街はこの地区を代表する通りだ。全長は三百メートルほど。今は車両進入禁止の時間帯だが、わたるたち以外はだれも歩いていなかった。若者向けの店が多く、放課後はここで遊ぶ中高生も多い。若者が遊ぶにはうってつけの場所だろう。 「まずはあれを食べて、次にあれを食べて……うーん、迷うな!」  泰然はシャッターが閉まる店を見ながら選別していた。少食なわたるからすると、その食欲はどこからわいてくるのだろうと、不思議でならない。 「放課後にそんなに食べ歩きしたら、夕飯が食べられなくなっちゃうよ」 「大丈夫! そのぶん運動するから!」  泰然がその場を走り回る。 「あれ、食霊じゃないか?」  泰然が足を止め、二時の方向を指差す。店じゅうのシャッターは閉まっていて、人通りもない商店街に、制服を着た女子高生がぽつんと立っていた。
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