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「んー、おいしい! 船瀬さんだっけ? お菓子作りの天才だね!」
佐英梨は会ったことのない三海のうでまえをべたぼめした。シフォンケーキは生地がしっとりかつふわふわとしている。ある程度飲食した後にこの軽さはちょうどいい、とわたるは思った。口の中にたまごのやさしい風味が広がる。
「学校で友達に手作りのお菓子をもらったり、バレンタインには友チョコを交換したり。これも夢だったなぁ」
佐英梨がそう言いながら夕方の空を見上げた。
「これも青春だよなあ!」
泰然が白い歯を見せて笑う。
「ふたりともありがとう。こんなに流行りに乗れたのなら、もう思い残すことはないかなあ」
「佐英梨ちゃん、まだ成仏するには早いよ。やっぱり、高級チョコバナナを食べよう」
わたるが佐英梨の手を取る。水丘商店街で食べられないだけでそれをあきらめたことに引っかかりを感じていた。
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