第一話 朝食はステーキに限る

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 小國泰然は七森家とは血のつながりがない、赤の他人にもかかわらず、生活をともにしている。  わたるは同居人と何事もなく会話しているが、泰然はこの世に存在しない人間だ。彼は一ヶ月前に死んだのだから。  それは今から二週間前のことである。わたるは学校の帰り道に幽霊となった泰然に出会った。それと同時に、自分は幽霊が視える体質であることを生まれて初めて知る。  その時、泰然はわたるにこう告げた。自分には野望があって、志し半ばで死んだと。それは世界中にあるおいしい食べ物をたらふく食べるというもの。食いしん坊な彼は十五年の人生での食事では全然もの足りなかった、もっと食べたいという未練をこの世に残し、成仏できないでいる。泰然のような食事になんらかの心残りを持つ幽霊を「食霊」と呼ぶらしく、日本には食霊が数多く存在しているらしい(国外にもいるのかは現在確認されておらず、日本特有の霊である可能性が高いとのこと)。
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