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二日後。学校の授業が終わってから、わたるは佐英梨を自分の家に招いた。
「わあ、素敵なおうち。私、友だちの家に招待されるのも夢だったの!」
「住宅ローンが後三十五年残っているんだって」
泰然が言う。
「そういうことは言わなくていい」
「ふふふ」
わたるの注意に佐英梨は笑った。三人はエプロンを着てキッチンに立つ。
「今からみんなで高級チョコバナナを作ろう」
わたるは佐英梨をよろこばせようと食材をそろえていた。おもな材料となるバナナと板チョコレートはどちらも高級品だ。まずはひとり一本ずつバナナの皮をむく。
「このバナナ、皮まで食べられるんだって。皮は俺が食べるね」
泰然が顔を上げ、口を大きく開けて、上からバナナの皮をまるごと入れる。それを三回くり返した。その姿は食事というより捕食だ。
「うわっ、下品な食べ方」
「あはは」
その食べ方にわたるは引いたが、佐英梨は笑う。
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