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***
そして、二十五日月曜日の朝。
僕はちょっと早めに教室に来ていた。カンちゃんも同じだったらしい。やっぱり、クリスマスプレゼントの報告がしたい!という気持ちは同じであったようだ。
「メリークリスマス、カンちゃん!プレゼントどうだった?」
「やったぜー剣崎!念願の、スイッチをゲットしたああああああああああ!」
「いいなあ、お前のサンタさん太っ腹じゃーん!」
ちなみに僕も僕で、そのスイッチのソフトを貰ったのでそれなりの値段はしている。しかも追加コンテンツ付きのソフトだ。一万円近いお金を出してくれたであろう両親には本当に頭が上がらない。
そして、自分達の楽しみはもう一つ。中島君が、どんなプレゼントをもらったのか?である。いくら大きいといっても、ポケットに入るサイズには限界があるだろうが。
「みんな、おはよー!メリークリスマス!」
「やー中島!めりくり!」
暫くして、中島君が登校してきた。景気よく挨拶したところで、僕は気づく。中島君がだぼだぼのズボンを履いていること――そして、その右のポケットが大きく膨らんでいることを。一体、何を入れてもらったのだろう?
「ふふふふ、ぼくがずーっと欲しかったものを頼んだんだ!見て見て見て!」
彼はポケットの中に手をつっこむ。
平均的な成績、運動音痴、大人しい。そしてのび太くんのような見た目で、それでいてカンちゃんのような友達がいる少年。僕にとって、中島君のイメージはそんなものだった。だから。
最初は、理解が追い付かなかったのだ。――彼がポッケから引きずり出したものが、真っ赤な色をしていたことも。
「……え」
それは、ビニール袋に入っていた。そしてビニールに入っていてなお――強烈な異臭を放っていたのである。それこそ、教室にいた他の生徒が振り向くほどには。
僕は、まじまじとそれ、を見た。きっとカンちゃんも同じだろう。思考がフリーズしてしまっていたと言っていい。何故なら。
「ずっと欲しかったんだ」
中島君は笑った。
「人間の、手首!これは、スーパーとかじゃ売ってないから!!」
教室に、複数の悲鳴が響き渡ったのはその直後のことである。中島君は最後まで、青ざめる僕達を見て不思議そうな顔をしていた。
その後、警察が調べたものの、その手首が“大人の男性のものらしい”ということまでしかわからなかったという。怪しい行方不明者などもなし。彼の両親は、そのようなものをプレゼントした覚えはないと断固として否定したそうな。
今でも、謎は謎のままである。彼のポケットの中に、おぞましいクリスマスプレゼントを入れたのは誰だったのか。そして、どうして中島君はそんなものを望んでしまったのか。
サンタクロースはいるのかもしれない。
ただし、それが夢と希望を配る、トナカイのソリに乗ったおじいさんとは――限らない。
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