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15.懐妊3
「リーア」
「はい、王妃殿下」
「産婆を呼んできて」
「お、王妃殿下!?」
「どうやら……生まれそうだわ」
「!!」
「そんなに驚くことはないでしょう。少し予定より早くなっただけよ」
「あ、あぁぁぁぁぁぁ!!! 産婆を!至急産婆を連れて参ります!」
慌てて部屋を出て行くリーアに苦笑するしかありません。
いつもの冷静さをかなぐり捨てた姿は年相応の女性にしか見えずとても可愛らしく映りますわね。
でも、こんな慌てふためいた姿を見せられると後々大変だろうなと思わないでもなかったりするんですが……大丈夫でしょうか?……うーん、今考えても仕方ありませんし成り行きに任せるしかないでしょう。
それから十分後にリーアが息を切らせて戻ってきました。普段運動しないのですぐにバテてしまうようです。それでも仕事が出来る女性って素敵だと思いますよ。
産婆と王宮専属の医師達を連れ立ってやって来ました。
第二子の誕生。
二番目の子供もまた男児。王子です。
これで私の地位は盤石になりました。
嫌な言い方になりますが、跡継ぎとそのスペアがいる限り私を王妃の座から追い落とす者は少ない筈です。未だに王妃の地位を狙う妃達は後を絶ちませんからね。隙あらば足元を掬おうとするので油断大敵といったところでしょうか?
王妃となり、後宮から王宮に部屋へと移った後も色々と裏で画策して来るようで面倒臭い限りです。まあ、そういった連中は全て叩き潰していますけど。権力というのはこういう時にこそ使わなくてはなりませんからね。
後、欲を言えば政略結婚に仕える王女が数人欲しいところですわ。
そして時は流れ――
第三子誕生。今度は女の子。娘なので王女として大切に育てられる事になりました。名前はアイリスと言います。誰に似たのか、口達者でおしゃまな子に育ちました。
「そなたに似た賢い王女だ」
と、陛下に言われましたわ。
僅か三歳で大国の王太子との婚約が決まりました。
今、娘は七歳。
未来の王妃としての心構えを少しずつ学ばせています。
とは言っても本人は楽観的で呑気なものですけど……。
「お母様、少し風が冷たくなってきましたわ。部屋に入りましょう」
アイリスはニコリと微笑み私を室内へと誘うのですが、その手にはしっかりと私のドレスの裾を掴んだまま放そうとは致しません。
「今は大事な時期なのですから」
「そうね」
「お父様達が心配しますわ」
私は、現在妊娠六ヶ月目。
四番目の子供を懐妊しています。
アイリスは「私はお姉様になるのですね」と喜んでいました。末っ子長女だった彼女は弟か妹が出来る事を純粋に喜んでいるようです。
「お母様、私は妹が良いですわ」
「あら?弟は嫌かしら?」
「いいえ。弟も可愛いでしょうけれど、妹はもっと可愛いらしいに違いありません。ですから私は妹が欲しいのです!」
「そう」
娘の言い分に思わず頬が緩みます。
この子が大きくなった時どのような人間になっている事やら……。楽しみですね。
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