1.後宮入り

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1.後宮入り

「ルーナ様。本日より、こちらの離宮がルーナ様の宮殿になります。どうぞ、ご自由にお使いくださいませ」 「分かりましたわ」  紆余曲折の末、私、ルーナ・ベアトリクス・ヴェリエはこの度後宮へ入る事になりました。    後宮には、正妃、上級妃、中級妃、下級妃といったランクがあります。  正妃と上級妃になれるのは侯爵家以上、中級妃と下級妃は伯爵以下。  更に、正妃は1人、上級妃は3人、中級妃は6人、下級妃は10人と人数制限まであります。その上で独立した宮殿を与えられるのは上級妃のみ。  運が良いのか悪いのか。  現在、上級妃は2人しかいません。最後の1人に私が滑り込んだ形になったのですが……大丈夫でしょうか?  おじい様は「何も心配するな」と言ってましたのできっと陛下と何かの密約を交わしたのでしょう。  溜息が出ます。  まあ、こうなった経緯は私にも原因があるのですが、根本的な要因は間違いなく元婚約者です。  ええ!  あのアホがアホな行動をしたばかりにこのような場所に来てしまったのです!!    思い出しても腹が立つ。    そう、あれは一週間前――――   「結婚するから婚約を解消してくれ」  この一言から始まったのです。    世の中、理不尽な事は数多くあります。それでも、長年の婚約者にいきなり「他の女の結婚する」と報告されるのは私くらいではないでしょうか?  それも仕事先に押しかけてきてまで言う言葉ではありません。    仕事の書類を抱え廊下を歩いていたところに何故か婚約者のテオドールが待ち伏せをしていました。ニヤニヤとやけに締まりのない顔でアポも取らずに突進してきたのです。 「急ぎの用なんだ。時間をくれ」  この言葉に嫌な予感がしました。  けれど断ると余計に面倒だと判断して仕方なく、本当に仕方なく空いている会議室を用立てた結果がコレです。 「実は、()()()()()()()()()んだ」  ありえない理由を言われ、私は唖然としました。  私という婚約者がいながら「彼女」とは何事ですか?  それに「子供」と言いましたか?  ありえません!  婚約者が居ながら浮気とは!  脳裏に「裏切り」と「不貞」の文字が浮かんでは消えていくのが分かります。  私の心の葛藤など知らないと言わんばかりのテオドールは、自分が浮気をして浮気相手を妊娠させた不届き者だという考えが全く無いのか、先ほどから緩み切った表情のままです。  事の重大さを理解しているのかしら?  まさかとは思いますけど私との婚約を忘れていらっしゃる?  ああ、それはありませんね。先ほど婚約解消を言ってましたから……いけません。思った以上に動揺しているようです。  とりあえず聞かなければいけない事があります。  
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