君と最後に散った花

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 未知夏に言われたとおり、花火を見た翌日に僕はホテルへ行ってみた。星空の部屋をひとり目指す。ここに来るときは、いつも未知夏と一緒だった。きのうのは悪い冗談で、待っていれば未知夏が目の前に現れるんじゃないか。そんな想像を何度もした。いつかみたいに強く「会たい」って望んだら、会いに来てくれるんじゃないかと。  星空はまだ天井に貼りついていた。未知夏はどんな気持ちでこの部屋のなかにいたんだろう。たったひとり、小さな体で抱えきれない絶望を抱えて。  この部屋のどこかに宝物がある。  予想に反して、部屋のなかを探しまわる必要はなかった。未知夏が横になっていたベッドの下のその奥にアルミの缶は置いてあった。 (本当にあった)  そう思って息をつめる。  きのうの出来事は夢でも幻でも妄想でもなかった。この缶を見つけたことが証明になるような気がした。ふたりでずっと探していた、小さな小さな宝物。  缶のふたをそっと開ける。  A5のノートがそこに入っていた。未知夏がやりたいと思ったこと。僕とやりたかったこと。鉛筆で書かれた文字は暗闇のなかでよく見えなかった。少しでも光がほしくて窓のそばに寄る。いっしょにやりたいこと、と一番上に書かれている。ひとつひとつの言葉を摘みとるように目でなぞる。  ホテルのなかを探険する。  宝さがしゲームをやる。  未知夏の声が頭のなかに直接なだれこんでくる。  夏の花火を屋上で見る。  ずっと友達でいる。  一ページ目はそんな言葉で埋めつくされていた。 (未知夏が自分で死ぬはずない)  文字を目で追いながら思う。 (未知夏は生きるために、このノートを書いたんだ。やりたいことを探して、それを達成するために生きていこうとしてたんだ)  空白のページが続いて、一番後ろのページにたどりつく。それを見て僕はハッとする。それはこの夏会った未知夏が――幻みたいに消えた未知夏が書き足した言葉のような気がした。
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