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愛美とは、今の会社で知り合った。
同期入社の彼女とは、研修チームが一緒で、初めからウマが合った。
2カ月の研修後、別々の部署に配属され、惣太は新宿、愛美は渋谷の事務所に勤務となった。
愛美とはその後も連絡を取り合い、週末には、新宿か渋谷の居酒屋で呑みながらいろいろな話をするのがお決まりのパターンになった。
何度目かの夜。
愛美が、少し酔いの回った顔で、
「惣太くんといるとラクだわぁ」
と言って目を細めた。初めて素の彼女を垣間見たようで、ドクンと鼓動を打つ。それを隠すように、
「へぇ、愛美ちゃんって誰とでも仲良くなれそうだけど」
彼女はフッと笑って、
「苦手なんだよね」
「……苦手って?」
「みんなでいるのが」
彼女はそう言って、手の中のレモンサワーのグラスをゆらゆらさせる。
「えー、そうは見えないな。研修の時だって、最初からみんなと普通に喋ってたし、ランチの時も、グループで楽しそうにしてるじゃん?」
惣太はそう言って、ジョッキのビールをぐいっと呑み干す。
「うん。だから、仕事終わると、もうグッタリだよ……」
愛美は苦笑いを浮かべ、残りのサワーを一気に呑んだ。
「気を遣ってるんだ、愛美ちゃんも」
「そりゃそうだよ。元来、人見知り強い方だから」
「……そっか」
「でも……」
と、愛美は惣太をじっと見つめ、
「惣太くんには不思議と気を遣わないんだよね。最初から」
「えーっ?それって、喜んでいいの?」
「もちろんだよ」
小首を傾げる彼女に、胸が締め付けられる。けど、幸福感でいっぱいになった。
夏が過ぎた頃から、休日も、たまに一緒に出かけるようにもなった。
都内の街で、ランチとお茶をするだけの、ちょっとしたものだったけれど。
気がつけば、愛美と付き合っているような気分になっていた。
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