階段下、雨と痛み  〖痛みに耐える人へ贈りたい、癒し系BL〗

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    頬をなぞっていた雫を、そっと掬いとったのだった。     f666ba0b-1295-41d2-8325-0f8510a7592c    「あ。…大丈夫?」 「ッッーー!?!  っえ、あっ、だ、大丈夫ですっ …」 ――あ、危なかった… あやうく叫び声を上げてしまうところだった。 近づいてきた男が、この世の者ではない者か、情緒不安定な不審者かと思ってしまった。 実際は親切な人だっただけようだ。 盛大に冷や汗をかいた自分が恥ずかしい… 「あ、えっと…、頭痛いのを和らげようと、泣いてただけで…、  あの…お、お構いなく…」 ――と、とりあえず大人しく立ち去ろう。   痛いから動きたくはないが、さすがに人がいるところで泣くのはちょっと… と判断したのだが、何故か男に退去を阻まれた。 それどころか、彼は隣に腰を下ろし、 ふわっ 「?!」 こちらの頭を撫でてきたのだった。     8ee70df4-ef2f-4fdb-9771-63b936263fc4   え、 な、なんで? この人…何がしたいんだ?? ふわっ ……あ…でも…   頭がなんか…     やわらかくなって、 …気持ちいい     f76be45f-e5a8-490f-931e-aee45795dd29   「俺、小さい時、  熱出して頭痛くなった時はこうやって、  母親に頭を撫でてもらったんだ。」 静かな声で告げられた思い出から、彼の意図を察した。 ――そっか、こういう和らげ方もあるんだ… ぽろっ……ぽろ… でも。 痛い時に、 誰かに助けを求めるなんて、自分には無理だ。 臆病な自分は、 "痛い" と口に出すことすら、 もう、 できない… …ぽろ…ぽろ。ぽろ、ぽろっぽろ   545c28c1-59db-4ce4-a461-896d63dc995f    「! っごめん、嫌だった?もうやめたほうがいい…?」 急にかけられた声に何事かと思えば、 自分の目から出る水量が、だいぶ増していることに気づいた。 男が不安そうに、様子を伺っている。 「あ、ち、違うんです。  こんな風に、えっと…慰めてもらったことが無くて…、  たぶん…嬉しいんだと思います。」 本当は、嬉しいだけじゃない。 羨ましさとか、悲しさとか…その他、諸々。 胸が詰まるような感覚がこみ上がってくる。 今まで蓋をしていた感情が呼び起こされ、奔流となってあふれかえっていた。 ――撫でてもらうのって、すごいなぁ。   まあ、これが最初で最後だろうけど…  だから、いいかな。 「あの、できたら…  もう少し、撫でいてもらっても、いいですか…?」 自分と彼はそのまま静かに過ごし、いつの間にか二人とも寝ていた。 先に目が覚めた自分は、持っていた付箋にお礼の言葉を書いた。 そして、それだけを残して立ち去った。      7fc59e4e-3dd4-4924-ac0d-f4a6133103f9          
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