階段下、雨と痛み  〖痛みに耐える人へ贈りたい、癒し系BL〗

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  今にも、雲がのしかかって来そうだ。  ee167bb5-a938-429c-b0fd-dfc49854f84a 自分にとって梅雨の季節は、雨じゃないものの印象が強い。 "それ"の苦痛から少しでも逃れようと、目的地へ向けて足を運んでいた。  e492fab6-1779-493c-acd8-3ab55c5c3209   いつもお世話になっている階段下は静かで、暗くて、少し埃っぽい。 構わず腰を下ろし、壁に背を預けた。 「はぁ…痛い…」 こめかみ周辺が、内側から痛みを発している。 天気が荒れる前などは、こうした頭痛に襲われることが多い。 しかし対処法は限られている。 頭痛薬を飲んだら、あとは効くまで待つしかない。 刺激となる光や騒音のない、一人で安静に過ごせる場所で。 人が多く集まる大学という施設でも、人通りの少ない階段の下は、安息地となってくれた。 「ふぅ…」 体の力を抜いて、なるべくリラックスする。 視線は適当に、でもあまり下は向かずに。 そうして、取り留めもなく思いに耽る。 つらいこと、がんばったこと。 怒り、悲しみ、さみしさ、惨めさを感じた出来事。 たまに嬉しいこと…。 意識が痛みに流されてしまわぬよう、気をつけながら。   08298821-1d0a-434a-a702-9ece85bf787a   すると、抑えつけられていた感情が、そろそろと顔を出す。 それらをさらに引き出すため、思考に深く埋没する。 じわ… 涙には痛み止めの効果があると言われている。 それを知ってからは、薬が効くまでのつなぎとして、「泣く」ようにしている。 最初はうまくできなかったが、今ではずいぶん上達したと思う。 コツは、自分の感情を肯定してあげること。 そうして感情とじっくり向き合えば、 号泣とまではいかなくても、泣くことができた。 …じわぁ……ぽろっ………じわ… ふと、 近くで足音が聞こえた。 「…?」 ここは古い校舎で、積極的には使われていない。 この階段下はその中でも、空き部屋が多い区画にある。 自分以外に、こんな辺鄙な所に来る人間などいるだろうかと、音のした方に目を向ける。   e1ad4def-12c1-4188-97ab-eec0c6c7f01b      3メートルほど先。 こちらを、喰い入るように見つめる 男がいた。   6fabf1a2-6319-4aec-9314-ef0d9cefd7a0          
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