所有欲が恋になる時

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「そういえば一つ聞きたいことがあるんだが」 「なんでしょう?」 「どうして遊郭を解体しろなんて言った?」  金色の瞳は鋭く私を捉えている。  ……詐欺を見過ごせなかったから。 とか、そんな正義感のある理由ではない。 あれは私の個人的な気持ちだけでしたことだ。  それを話して良いものなのかと悩んだけれど、一切目を逸らさない秋都様は私を逃すつもりはないようだった。 だから誤魔化さず話そうと、ぐっと息を呑む。 「私、秋都様を守りたいと思ったんです」 「俺を?」 「あそこに遊郭が残っていることが秋都様の心を蝕むのではないかと思って」  誰だって身を売るなんてことはしたくないはずだ。 けれどそれしか猫が富を得る選択肢はなかったのだ。 「すみません、私にはそれくらいのことしかできなくて」  秋都様は何も答えなかった。 神妙な顔で黙りこくっているから、私はまずいことをしたのかとドギマギする。 「ご、ご迷惑でしたか?」 「いや、そうじゃない。守りたいなんて言われたのは始めてだから……動揺しているだけだ」  ふわりと、開け放たれた障子から風が入ってくる。 春の兆しを感じさせる柔らかい風はそっと私たちの髪をゆらした。  ふと庭に植っている梅の木の花びらが舞い込んできて、秋都様は惹かれるように外を見る。 彫刻のように美しいその横顔は、じっと風が吹くのを眺めていた。  秋都様、何を考えているのでしょうか……。  外の陽気の心地よさに身を委ねながら待っていると、秋都様はしばらくしてから意を結するようにこちらを振り向いた。
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