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「秋都様。私あります、理想!」
勢い余って秋都様の着物を両手で掴んでしまった。
秋都様は一瞬驚いたものの、すぐに「ふっ」と得意げな顔をする。
「なんだ? なんでも言ってみろ」
「お花をたくさん飾りたいです!」
「花? そんなんで良いのか?」
「はい。父と母は祝言の時、桔梗の花で部屋を埋め尽くしたのだとよく話していました。私はそれを聞いていつも憧れていたんです」
お母様は鼠族の中でも珍しく山の方に住んでいた方で、故郷には葉も茎も花も真っ白の変わった桔梗が咲くそうだ。
その可憐な見た目や標高が高く寒い環境でも育つことから雪桔梗と呼ばれている。
桔梗の花言葉は永遠の愛。
お父様はお母様に馴染みのある花を捧げ、生涯を共にすると誓ったのだ。
秋都様は私の話を聞くとにこっと笑って頷いてくれた。
「分かった、そうしよう」
「ありがとうございます! ですが桔梗は秋の花ですから、今は菜の花などがいいと思います」
「あら、あるわヨォ桔梗。うちの商品は草木染めですからね、年中色々な花が取れるように畑を作っているんです」
オッホッホ、と孔雀さんは自分の手を扇子のようにして優雅に仰いでいる。
秋都様は感心したように孔雀さんを見た。
「それは良かった。早速手配してくれ」
「あ。でも秋都様、時期外れのお花は値が張」
「いやぁもう、アタシとっても素敵な祝言になる気がして今からドキドキが止まらないわぁ〜! お花はいいわよねぇアタシも大好きよ! この前もぺらぺらぺらぺら」
孔雀さんは羽を広げた。
すごい迫力だ。
その迫力のまま、ものすごい速さで喋りながらものすごい速さで算盤を弾いている。
お城がいくつ買えるのだろうという額の数字が出来上がっていって、私は真っ青になった。
そうか、猫塚家は広いから……埋め尽くすには余計にお金がかかるのですね!?
私はなんて罪深いことを言い出してしまったのでしょう、止めなくては!!
ってきゃー!?
秋都様はまさに念書に印鑑を押そうとしているところだ。
私は慌てて秋都様の袖を引っ張った。
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