贈り物

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この場に居たくない この世のどこにも居られない とにかくこの場を去らなければならない 僕の居場所なんてない どこにも どこにだって あるわけない 僕は逃げた このまま逃げよう と、突然背中を襲った大きな衝撃・・・に思えた 小さなタッチで足を止めた もう! 歩くの速いんだから!! きみは誰にでもそうなんだろ? 声にならない声が僕を締め付ける きみは無理矢理僕の顔を覗き込むと なんでいつもそんなに 苦しそうなの? 僕の右手と左手を きみの左手と右手が そっと握る 私が幸せにしてあげる! 、、、な、、なんで、だよ、、 さっきも、、あっちで、、 屈辱とときめきで ぐしゃぐしゃになりながら 言葉を絞り出す 「あれ?」 視線を受けてさっきの男が ニヤニヤしながらやってくる 「なに? お前の好きな人?」 「お兄ちゃんったら!」 「なんだなんだ少年!  ライトに行こうぜ!」 僕の肩をリズミカルに叩くと 足取りも軽く去っていった ごめんね お兄ちゃんっていつもあーなの! もーー! 、、、なんで、、僕なの、、? はにかんだきみの笑顔が弾ける 好きなんだもん! 理由なんて・・いらないじゃん! そう言って 僕のポケットに・・・ いっぱいの・・ を・・・ やだ! 泣いてるの!? 泣かないで?? きみのコロコロと鳴るような声が僕を包む ねえ? 恥ずかしいんだけどね こんなに作ったの・・見て それは溢れんばかりの赤いリボンのチョコだった これだけあったら お母さんが食べちゃっても食べられるでしょ? なんか・・失礼かなって・・思ったんだけど・・ 僕の反応を伺う潤んだ瞳が 乾いた僕の心臓をギュッとする そんなに苦しそうな顔しないで・・ なんか・・ごめ・・っ!! きみの言葉の最後を待たずに 僕はきみを抱き寄せた 驚いて強張ったきみの体が だんだん柔らかくなる きみのポケットにも 僕の・・・ を・・ 遠くどこかの甘い音楽が聞こえる 街の外れの片隅で僕たちはこの街の一コマとなり 溶けていくのだった・・
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