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「ナンバー1のイエローだ」
十六夜は何の迷いもなく即答した。
「いいでしょう、ではカードオープンだ」
狐村がカメラを停止させ、本体付属の小さな画面を3人で覗き込む。仕事の終わった神月は寄ってこず、離れたところで満足そうに笑みを浮かべながらキューを拭いていた。
「……黄色ですね」
玉がポケットに飛び込む瞬間で一時停止させてよくよく見直す。黄帯ではない。玉全体が黄色いからナンバー1の黄色だろう。ちらりと狐村の顔を見やると『ちっ!』と舌打ちをしていた。黄色として認めたのだろう。
「次に行こう」
やや憤然としながら狐村が次のポケットに近寄り画像を再生にかかる。
「……ふう」
ひとつため息をつく。
実は内心ひやひやしていたのが『黄』と『黄帯』の見間違えだったのだ。だから最初に黄色を消せたのは大きい。あとは色がはっきり違うからまだましだろう。
この順番で回るとしたら私の見ていたナンバー3の赤がラストになるだろうから、なるべくならそのひとつ手前くらいにナンバー9の黄帯が来てくれると神経をすり減らさずに済むので嬉しいのだが……。
「そいつはナンバー9のイエローベルトだ」
狐村が何も聞く前に十六夜が断定する。
え? ここで? もう?
慌てて再生された画像を覗き込むと、はっきりと黄帯が映っていた。ホっとする反面、少し残念な気もするが。
「次に行こう」
相変わらず狐村は『いい』とも『認めない』とも言わない。ほんと、嫌味な性格だこと。モテんよ、そんなひねくれた根性では。
「次はナンバー4のパープル(※赤紫)とナンバー6のグリーンだ」
またしても十六夜に迷いはない。さも当たり前そうに。
「次だ」
ちらりとだけ画面を見て、狐村が場所を変える。念のために画像を再生して確認するが、間違いなく紫色と緑色の玉が映っていた。
よし、これなら。
ぐっと拳を握りしめる。
当然と言えば当然だが、不確定な要素が減っていくから後になればなるほどこっちの勝率は高くなる。最後の1つは8つ目のナンバーが確定した時点で自動的に決まるから実質『残り4』。
気のせいか、狐村の顔から余裕がなくなっているようにも窺える。ざまぁみやがれってんだ。この調子で最後まで突っ切ってくれれば。見てろよ? ぎゃふんと言わせてやる。
「そこはナンバー7のダークレッド(※えんじ色)。面倒だからついでにいうと、次がナンバー8のブラックとナンバー5のオレンジだ」
「……」
じろりと目を剥いてから、狐村が2台のカメラを確認する。私も一応見直しはするが、全て合っていた。これで残るはふたつ。ナンバー2の青と、ナンバー3の赤だ。
そして、私が見ていた一番最後のポケットに沈んだ玉が赤だったから、その手前は青しかありえない。
「そして実質の最後だが」
十六夜が次のポケットを指差すと、狐村が忌々しそうにカメラへ手を伸ばした。
「そこに映っているのは、『ナンバー3のスカーレットレッド(※赤)』だ。間違いない」
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