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時空のハッカー
一人しか居ない宿泊部屋の空間内。
「さあ、いつも通り行こうか……」
━━━━ 時空の放浪者
彼が遺品たちに手を翳し、呟くと。宇宙の肩辺りに薄っすらと生まれた、霧状の〈ナニカ〉。
ソレは、━━姿を現し始めた。
少しずつ、少しずつ、人形になっていく霧。
だが……数分経っても、これ以上本来の姿に具現化する様子が無い。
━━━━━━…………何故?
と、ふと思った。
だが、その答えがすぐに分かった。あることがキッカケで手に入った〈能力〉。そこから今日までの長い付き合いだからこそ、すぐに理解する。
それを横目で見ていた彼。霧状のナニカにそっと右手を置き、赤子を触れるように撫でる。
「大丈夫だよ。今日は、いつもと違う場所だけど僕しかいないから……………出ておいで」
三秒後、背中に纏わり付いているだけだった霧は、徐々に二本突起が生まれ彼の首を括るように囲む。
後、原形を留めていなかった〈ナニカ〉は、徐々に丸び帯び始めた。
ソレは、透明から薄っすらとした健康的な肌色に生まれ変わり、弾力のある皮膚と共に腕が出来上がっていく。
それ以外のも、背中に隠れているワイシャツを着た細身の胴、短パンを履いていた。
真正面から見ると……宇宙の腰辺りからニョキッと、効果音が一つ、二つと。細身のある足はやんちゃさが溢れている。素肌から下は、ハイソックスに宇宙と同じブランドの靴が、元気余っているのかバタつかせていた。
『それだったら。はやくおシゴトおわらせてさぁ~、おやつたべようよぉ!
ひさびさのそとだから、また〈くっきー〉っていうのたべたい!』
頬っぺたが落ちそうな丸みのある顔を宇宙の肩に乗せ要望を言う相手。所謂、彼の背中にひっつきつつおんぶして貰っている状態といえば、正確かもしれない。
今でも、好奇心満々のくりっとした猫目で「くっきー、たべたいよ!そらぁ」で再要望を訴えている状態。
そんな様子に「はいはい。シゴト終わったらね〜」と適当に宥めつつ、赤毛の跳ね癖っ毛の短髪を優しく撫でる宇宙。
小柄な体形━━五歳くらいの背丈の少年が誕生した今。
彼こそが、時空の放浪者
神龍時 宇宙の能力の一部であって、〈歴史覗き〉の悪癖持ちあり。
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