第二章 よろず探偵事務所にて。

4/4
前へ
/19ページ
次へ
◇◇◇ 「お茶のおかわりをどうぞ」  男二人しかいない、この室内にて。  突然、右隣から女性の声。湧水のような透き通った魅力的な声色に、聞き覚えがあった僕は声の主へ振り向く。 「あれ!〈受け子さん〉?いつから、居たんです??」  僕の言葉に、いつものようにただ微笑むだけの彼女。その微笑みは、何処となく人間臭さが無い。いつもの事だけど。  そんな考えをしているとは露知らずの受け子さんは、手前に置いてある湯呑み茶碗を手に取り、無言で新しいお茶を入れ始める。 「いやぁ〜、すみません。案件話しに夢中になって気づきませんでしたよ〜」 「……いえ、大丈夫ですよ。どうぞ、温かい内にお召し上がりくださいませ」  いつものように営業スマイルで対応した後。 (それにしても……いつから、居たんだろう?出入り口は一つしかないのに)  ふと疑問が生まれつつ、思わず心の中で呟く。新しいお茶を淹れて貰った後、一口飲む。 「彼女は、修理に出していたからね。最近、動きが悪くて〈アオイ〉に頼んだんだよ」 「……アオイ、さんですか?」  初めて聞く名前に、無意識にオウム返ししてしまう。 「あぁ!知らなくて当然だよ。だって……」 ーー 君の【御先祖】だからね  またもや、意味不明な一言。これからする予定の〈僕の計画〉が脳内からぶっ飛びかけた。だが、瞬時に切り替えて曖昧に返答して終了させた。  ココでは、深入りしてはいけない。これは、絶対だ ーー 「さて、最後に〈派遣先の出入り口の地図〉と先程の〈ダイイングメッセージ〉の用紙を渡しておくね。 ……宇宙。どんな時でも、」   「はい!僕なら大丈夫ですよ!! 帰ってきたら、さっきのお土産のお店教えて下さいね〜♪」  案件の資料を貰った僕は、明日から始まる案件の為に宿泊先のホテルへ向かった。  頭の中に今でも過ぎる、あの言葉。 ー 天国 ◼️吸う 図書館の◼️◼️   涙 ー  契約後に、不安が吹っ切れた今。内心これから始まるこの謎解きに楽しみにしている僕がいた。  だが、この時は知らなかった……。  今回の案件は、予想外の展開と難儀な事になるとは ーー              
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加