35人が本棚に入れています
本棚に追加
6rd glass
苦笑いしている地央との意思の疎通を図るには短すぎる廊下。
感情の整理をつけられないまま通されたリビングルームに入った瞬間3人の成人男性の視線を一心に浴びた真直、想定よりも多い人数に即座に発した挨拶は、なんともお粗末なものとなってしまった。
「こ、んにちは」
本当はもう少しマシな対応ができるはずだった。
だが御崎の登場で狂わされたところに、父親以外の大人がいるとは思っていなかったものだから、誰に挨拶をしていいのかわからなかったのだ。
「初めましてどーも」
「受験だったんだってね。お疲れさま」
二人とも年のころ30過ぎといったあたりだろうか。ソファーに座ってモヤシの根取りをしていたらしい、やや浅黒く細見で精悍な容姿をした青年と、メガネをかけた白く丸い青年が笑顔で声をかけてくれる。
「あ、ありがとうございます」
そうして視線を移し、オープンキッチンから姿を見せていた真っ黒に日焼けした短髪の、逞しい体の壮年の男が仏頂面でこちらを見ているのに、心臓が不穏に音を立てた。
うわぁ。怖ぇ。
厳つすぎだろ。
まんまじゃん。
鬼軍曹じゃん。
いや、階級知らねえけど。
つかこれは敬語になるわ。
「初めまして。黒川です」
まずは父親にしっかり自己紹介をしなければと、腹をくくって口を開いた真直に返されたのは「どーも」の短い応えのみ。
とっつきにくぅーーーー。
見た目は地央さんの遺伝子皆無だけど、受け応えが初期の地央さんそっくりだわ。
え。
つか俺、睨まれてる?
嘘だろ。
娘の彼氏が初めて家に来たときの頑固親父かよ。
え………何…?
地央さん、まさかパパにカミングアウトしてんの!?
はは……あー、そうね、地央さんって案外そういうのズバッと言いそう………うん…白黒つけたいタイプだもんね……はは…。
────って、いやいやいやっっ。
聞いてないんすけどーーーーーー!??
最初のコメントを投稿しよう!