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二話
私が葛と結婚をして、早三年が過ぎた。今は桜などの花が爛漫と咲いていて、春になっている。仕事が休みの日は葛や息子の駒若と一緒に庭に植えてある花ヶを眺めたり、話をする穏やかな日が続いていた。
夜になると、二歳になった駒若は眠る時刻になるので夫婦二人で過ごす。
私は二十二歳で葛は二十一歳になっていた。
「…葛、駒若も大きくなってきたし。二人目がほしいと思わないかな?」
ふと、ある夜に尋ねてみた。だが、葛はちらっとこちらを見ながらも冷たい口調で言った。
「まだまだ、駒若は甘えたがりです。わたくしが新しく子を身ごもって、あの子の相手ができなくなったらどうするのですか?」
「まあ、その通りではあるが。私も娘がほしいからね。一人くらいはいてもいいんじゃないかと思う」
笑いながら言うと、葛は睨みつけてきた。
「…産む側にもなっていただきたいのですけど。簡単におっしゃらないでください」
声は先ほどよりも怒気をはらんでいる。私はよけいなことを言ってしまったと思ったが。時は既に遅かった。葛は私の顔に手を伸ばすと、思いっきり、頬をつねってきたのだ。
これには驚いてしまう。
「…い、痛い!」
「ふざけたことをおっしゃるのはこの口ですか!まだ、駒若を産んだ時の怖さは忘れられないのに。これだから、男の方は嫌なんです!」
つねっていた頬から手を離すと、葛は背中を向けて、つんとそっぽを向きながら、部屋を出て行ってしまった。
それから、一晩中、葛は寝室には戻ってこなかった。
あれから、三日が経った。葛が一緒にやすんでくれなくなってから、寂しい一人寝の日々が過ぎていた。子のことで大層、怒らせてしまったらしい。
私は妻が許してくれるまではとこらえることにした。
だが、四日経っても五日経っても、葛から、一緒に寝ようとは言ってくれない。試しに私から誘っても、冷たく一睨みされて無視された。
「…葛、今日は一緒にやすもうか?」
「…駒若と一緒に寝ます。乳母や女房たちには宿直させますので」
宿直(とのい)という言葉を聞いて、私は頬がひくりとなるのを止められなかった。そのまま、葛は駒若の部屋に行ってしまった。
翌日、まんじりとしない中で一晩を明かした私は妙に冴えた頭で葛の夜離れ(よがれ)は六日前のあの一言のせいだということにふと、気が付いた。
確かに駒若が生まれた時は初産であったし、なかなかの難産であった。私も気が気じゃなかったのを思い出した。
仕方なく、葛が私の部屋に来るのを待つことにする。
とりあえず、軽々しいことを口にしてしまったのは事実だ。謝らなければ、葛は怒ったままだろうし。
私は重いため息をつきながらも部屋に入ってきた女房に葛を呼ぶように言いつけた。
少ししてやってきた葛は顔は怒っていたが、口調は穏やかなものだった。
「…殿、いかがなさいましたか?」
あえて、私の名は呼ばず、殿と言ってくるのでこれには困った。だが、私は笑いながら、詫びの一言を口にした。
「…葛、その。前は軽率なことを言ったと思ってる。すまない」
素直に謝ると葛は呆気に取られた表情になる。
そして、しばしの沈黙があって、葛は私のすぐ前までやってきた。
「そんなに素直に謝られたら、許すしかないではありませんか。わかりました、わたくしもやりすぎましたわね。殿、今は朝ですから駄目ですけど。夜でしたらよいですよ」
まるで、自分が主のように言ってくる。顔は先ほどよりも穏やかなものになっていた。私は安堵しながらも夜の言葉にはしっかりと頷いた。葛は頬を赤らめて、女房と衣装を用意すると言って、部屋の隅へ行ってしまった。
それを微笑ましく見ながら、宮中へ参内する準備をした。
内裏にて私は妹の梅壷女御の許をご機嫌伺いに訪れた。
女御は私が久方ぶりに来たので嬉しそうになさっていた。御簾越しではあっても、直接お声をかけてくださる。
「…兄様、お久しぶりですわね。奥方様もお元気でいらっしゃいますか?」
今年で十七歳になられた女御は今東宮の妃でもあった。
入内なさってから三年になるが、気が強いながらも天真爛漫な所はお変わりになっていない。
「ええ。元気でいますよ。女御様もお元気そうで何よりです」
昨日まで喧嘩をしていたことはいえなかった。
「まあ、そうですか。奥方様とは既に御子もお生まれでしたわね。うらやましいです」
少し悔しさをにじませたお声に私はどうしたのだろうと訝しく思った。そして、すぐに理由に気がついた。
女御にはまだ、東宮との間に御子がお生まれになってはいないからだ。既にすぐ上の姉の一の姫や兄の参議こと友成にも子が生まれているのだが、女御にはその兆しがおありではなかった。
東宮とは仲もよくておられるのに、それが影を落としていた。私はそれを考えながらもやんわりとなだめることにした。
「…女御様、焦ることはありませんよ。時が来れば何とやらと申すではありませんか」
「兄様。ですけど」
「今はまだ、時ではないとの天の思し召しなのでしょう。子は授かりものなのですから」
男であるとはいえ、子を持つ私に言われて女御も納得してくださったのだろうか。
その後は穏やかな口調になられたのであった。
夜になって、帰ってくると葛が寝室で待ちかまえていた。
既に小袖に着替えていて、きちんと居住まいを正して座っている。
「殿、お帰りなさいませ。今日はどうでしたか?」
「ただいま、帰った。今日は梅壷様にご機嫌伺いに行ったのだが。御子に恵まれないことに焦りを感じておられるようだったよ」
まあと葛は驚いてみせた。
それもそうだろう。 男である私の前でも匂わすほどだったのだから。しばらく、黙っていると葛も無言で私の直衣や袴などを脱ぐ手伝いをし始めた。互いに何も話さずにいるうちに、いつの間にか、私は冠もはずして下襲と下袴だけの格好になっていた。葛は私の下襲や袴も脱がせると、一度立ち上がる。
そして、三枚ほどの圭を持ってきて、私の肩に羽織らせてくれた。
私は圭を羽織るとそのまま、葛を腕の中に引き寄せた。
強い力で抱きしめると葛が両手を上に動かして、私の頬を包み込むように触れてきた。そして、軽く口づけを何度かしてくる。
「…私、今日考えてみたんです。もしよろしければ、女御様に御子がお生まれになるようにお寺に参籠してみてもいいのではと。お社に詣でてもよいでしょうし」
「…神仏にお願いをしろと。確かにそれも一つの方法だね」
私はそう言いながらも、葛に先ほどよりも深い口づけをした。奪い取るようにすると葛の息が上がる。
舌で唇をなぞると、咥内に侵入させた。葛も自分から舌を出してきたので、それに絡ませて強く吸いあげる。鼻にくぐもった声が出る。
「んっ…」
私はそれをよいことに歯列や他の部分も丹念になぞった。
葛は膝から力が抜けたらしく、かくんっと折れてしまいそうであった。それに気づくと背中と腰に腕を回して支える。
頬を紅潮させ、瞳を潤ませる彼女によけいに色気を感じた私は執拗に唇を貪り続けた。
しまいには立っていられなくなった葛を褥に横たえさせて、耳や首筋にも唇をはわせた。舌でたどりながら、強く吸い上げる。途端に首筋に赤い華が咲く。葛はそのたびに体をぴくりとさせる。
「あっ、ああ…」
「葛…」
名を呼ぶと、両腕を首に回してきた。私はまた、軽く口づけをする。
小袖の胸元をくつろがせながら、腰紐に手を伸ばした。するりとほどいて、脱がせる。露わになった乳房に両手で掴み、やんわりと揉みしだいた。
だが、しばらくはしていなかったので、じらすようにゆっくりと中心には触れないようにする。葛は物欲しそうな目でこちらを見てくる。
既に生まれたばかりの姿の彼女は美しかった。けれど、仕返しとばかりに私は口づけをしながらも乳房を円を描くようにもみ続ける。激しくはしないので、葛は足をすり合わせる。もどかしいのか、私にとぎれがちな声でこう言ってきた。
「宗明様、あの。もっと、激しくして…」
「…だったら、私の言うとおりにしてくれたら、あなたのお望み通りにしよう」
そう答えると小さく頷いてきた。
私は葛に自分から深い口づけをするようにと言いつける。これには驚いたらしく、固まってしまう。だが、それをしないと続きはないといえば、葛はおそるおそる顔を私に近づけてきた。
そして、拙いながらも口づけをしてくる。最初は軽いものだったが、舌で私の唇をなぞった。私のやり方を真似しているらしい。
舌を咥内に入れてきたのでじっとされるがままになる。
だが、これでは足りない。
私は葛の後頭部に手を添えると今度は自分から舌を吸って、絡ませた。葛も舌を絡ませてくるのでぴちゃぴちゃと淫らな音が部屋に響く。咥内を一通り味わうと、胸元に顔を下げた。
中心を咥内で転がした。葛は私の頭を両手に持って、もっとと言ってくる。
舌で吸い上げると、足がぴんっとなる。
「…あなたがこんなに乱れるとは。滅多に見れないな」
「…あっ、いや!」
乳房を揉みながら、舌で愛撫をした。葛は一度、達したのであった。
乳房からわき腹などを手でなぞり、腿にまでいくと、葛はとろんとした表情でこちらを見ていた。
私は内腿を唇でなぞると舌で舐めあげる。すぐ後に強く吸い上げるとまた、体を痙攣させた。
彼女の弱い所は内腿だということは知っているので、執拗に責める。葛はそのたびに艶やかな声を出して乱れた。
茂みに沿って、舌でなぞるとそのまま襞を指で広げて、花芽を押しつぶした。
「…あっ、あん!」
じわりと蜜があふれる。
舌を丸めて蜜壺にねじ込むと、そのまま、奥へと入れる。指は花芽をこすったりしながら、同時に動かす。
これには葛も逃げようとする。私は両手で腿を押さえ込んだ。
舌と唇を使って、舐めあげて強く吸い上げる。じゅるりと音がして私の理性が溶けてなくなりそうになった。
葛は二度目の絶頂に達したため、私も小袖を自分で脱いだ。彼女の上に覆い被さると屹立したものを蜜壺にあてがう。
常のようにゆっくりと少しずつはせず、一気に貫いた。「…ひっ、ああ!」
悲鳴を葛はあげるが、私は激しく腰を打ち付けた。
「あっ、あっ!」
揺さぶるたびに葛は声を上げる。私は奥まで入れて、一気に引き抜く。それを何度も繰り返していた。
名も呼ばずに、ただぐちゅぐちゅという水音などが部屋に響いていた。しばらくして、私は葛の乳房を揉みながら、責め立て続ける。
中はきゅうきゅうと締め付けてきて、意識を持って行かれそうになった。
「…あっ、ああ!もう、駄目!」
葛が声をあげた時、蜜壺もぎゅっと締まった。私もうめき声をあげながら、中に放った。
そのまま、ゆっくりと抜くと葛はそれすらも刺激になったようでまた声をあげる。
「ああっ…」
私は葛の頬にそっと手で触れた。
「…すまない。ちょっと、性急にしすぎた」謝ると葛はゆるゆると首を横に振った。
「いいえ、そんなことはありません。ただ、すごく驚きましたけど」
その言葉に嬉しくなって、私はまた口づけをする。
それから、夜が明けるまで葛を寝かさなかったのはいうまでもない。
おわり
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