一話

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一話

 それは寒い真冬の雪の降る夜だった。 私は妻の葛と同じ部屋で休んでいた。 「葛…」 葛のほっそりとした身体を引き寄せた。懐かしい香りが鼻をかすめる。 「宗明様、いかがなさいましたか?」 私の実名を葛は呼んだ。 無言で彼女を抱きすくめると、首筋に顔を埋めた。 「…葛、今からしようか?」 低い声で囁いたら、驚いたらしくこちらに顔を向けてくる。 「今からでございますか。でも、わたしは眠りたいですし。いかがいたしましょうか」 なにやら、悩んでいるらしい。 うなじの辺りに口づけをしてみた。 途端に葛は小さく声を上げる。 「あっ。宗明様!」 咎めるようにこちらを見てきたらしかった。 明かりもない暗闇の中でしかも女房たちがいないのだ。 私は堪えきれずに頭のてっぺんにも口づけを落とす。 観念したようで妻はおとなしくなった。調子に乗って、耳や頬にも口づけをした。 そのたびに艶やかな声を上げる。 「んっ。もう、よろしいでしょう?」 「いいや。まだまだだよ」 低い声で耳に息を吹きかけながら囁けば、葛はびくりと反応した。 「ふぁ」 これはよい反応だと内心でにんまりとした。 そして、腰が抜けてしまったらしい葛を褥に押し倒した。 「あなたの艶やかな声をもっと、聞かせて欲しい。いいかな?」 「…わたしは。嫌なのですけど」 顔を横に向けながら、言われてしまう。 私は困ってしまった。 でも、一度付いてしまった火はなかなか、消せない。 私はいやがる妻に無理強いはしたくなかったが。 「…けど、やめてしまったら、後悔するしね。葛、激しくはしないから。許してくれるか?」 じっと、目を見つめながら言えば、葛は仕方ないとため息をついた。 「わかりました。夫婦ですものね。良いですよ」 意外とあっさりと許可が出る。 私は舞い上がってしまって、彼女の額や瞼に口づけを降らせた。 軽いついばむようなものであったが。 唇に達した時も最初は触れ合う程度で何度もする。 それが激しく、濃厚なものになったのはしばらく経ってからだった。 舌で歯列をなぞる。既に、何度か経験しているため、彼女の感じる場所は心得ている。 「はぁ、んっ…」 私が葛の舌を吸い上げれば、何ともいえない甘やかな声が漏れ出る。 口内を蹂躙して、堪能するとやっと、唇を放した。 とろんとした目でこちらを見上げる葛の姿がうっすらと浮かび上がる。 明かりがあったら、もっと、歯止めがきかなかっただろう。 葛の髪を撫でながら、首筋に顔を寄せる。 口づけをして、きつく吸い上げた。 放せば、赤い華が浮かび上がったことだろう。 私は支配欲を刺激されながら、そんなことを想像した。 「ああ、宗明様…」 葛の喘ぐ声が耳に届く。それに刺激されて、首筋から鎖骨にかけて、唇でたどる。 首筋の先ほど吸い上げた所を舌でぺろりと舐めた。 「…ひゃうっ」 びくんと身体がはねる。 葛は首筋が弱いことを知っているから、何度も唇でたどっては舌で舐めることを繰り返した。 そのたびに甘い声をあげる。 小袖の胸元をはだけて、胸元も唇でたどった。 そして、白いまろやかな乳房が露わになると、両手で下からすくい上げるようにやわやわと揉んだ。 「むね、あきさまぁ」 すっかり、感じているらしい葛は私の首に腕を回してくる。私も揉んでいた手を止めて、髪や背中を撫でてやる。 「どうした?恐くなったか。初めてでもないのに」 「違い、ます。あの、いつになく、性急になさるから。どうしたのかと思いまして」 恐くなったわけではないらしい。 私はよしよしと撫でてやりながら、訳を言った。 「すまない。少し、やりすぎたかな。もう、やめようか?」 二度としないとは言わない辺り、私もどん欲だ。 だが、葛はふるふると首を横に振った。 「あの、嫌ではないです。続きをやってくださってかまいませんわ」 はっきりと言われてしまって、私は驚いて、目を見開いた。そして、くつくつと笑ってしまった。 「…あなたにはかなわないな。わかった、続きをやろうか」私はまた、再開した。 胸を丹念に揉んで、葛の様子を伺う。 先ほどのように恐がられてはかなわない。 既に、小袖は胸元が露わになっていて、上半身がはだけた状態になっている。 肩やわき腹などを手でつうと指先でなぞるようにしてなで上げた。 「んぅ、ん…」 身体をよじらせて、葛はまた声をあげる。 丁寧に愛撫を施しながら、腹まで衣をはだけさせた。 「可愛いね、あなたは。愛しくてたまらないよ」 甘い言葉を言えば、暗闇でもわかるくらいに葛の白い顔や身体が赤く上気した。 潤んだ瞳で見上げられれば、我慢ができなくなる。 理性がすり切れそうだ。 乳房に顔を近づけると乳首や周りを舌で舐めあげる。 ぴちゃといやらしい音が出て、葛もあっと声を上げた。 何度も執拗に舐めて、親指の腹で左側の乳首をこする。 既に、私に慣らされた葛は敏感に反応した。 結婚をして、三月は経つ。 毎日のように睦みあっているため、すぐに葛は陥落してしまうようになった。 それを思い出しながら、右側の乳房から顔を放した。 左側の乳首も舐めあげれば、さらに嬌声が響いた。 「ああっ!」 私は嬉々として、小袖の帯をしゅるりとほどく。 生まれたままの姿がその場に現れる。 太股や膝を手でなで上げたのであった。小袖を完全に脱がしてしまうと、葛を起こして、膝の上に乗せる。 もう一度、深い口づけをしながら、背中を撫でる。 力が抜けてしまっている彼女を両腕で支えながら、唇をむさぼりあう。 私の肩に両手を置いて、葛は息も絶え絶えに応える。 「ふぅっ、ん」 鼻から抜けるような甘い声が出る。 頃合いかと思って、内ももの辺りに手を伸ばす。 そっとなでると、びくんっとまた、身体がはねる。 「…やっ。そんな、さわらないでぇ」 足をもじもじさせながら言うので私は笑ってしまった。 「早く、終わらせたいのだったら。堪えてほしいところだね。私もかなり、堪えているんだよ」 熱っぽく見つめたら、顔を背けられた。 女性の一番敏感な場所に手を進める。 そこに伸ばしてみると、しっとりと濡れていた。 花芽を探し出して、秘裂をなぞったら、一際高い声で葛はないた。 既に、とろとろに濡れていて、私の指にまとわりつく。 それを花芽にまで行き渡らせると、親指で潰した。 「…はあぁん!」 艶やかな声に興を乗せられて、何度か花芽をこすりあげる。 手で秘裂や花芽を刺激しながら、乳首にも舌で舐めあげたり、吸ったりした。 それを繰り返していたら、葛は声をあげながら、身体をびくんっと短くけいれんさせた。 どうも、達したらしい。 私は自分の衣をさっと、脱ぎ捨てた。 愛液で濡れてしまった指を舐めてみたら、それを見た葛は恥ずかしそうにそれを見ていた。舐め終えると、葛の身体を再び、褥に横たえた。 両足を大きく開かせると、蜜壷からは愛液があふれているらしく、花芽がぷっくりとなっているのが見えた。 顔を近づけると、舌で花芽の部分を舐めあげる。 ぴちゃぴちゃと音が鳴って、そのたびに葛は喘ぐ。 一回、達したとはいえ、まだ私には足りない。 既に、力が抜けてしまい、なすがままの彼女に無理を強いてはならないのはわかっている。 だが、私の欲望は留まることがないのだ。 愛液がまたあふれ出してきたのを口で吸い上げる。 じゅると音が鳴り、葛もないた。 「ひぁっ!ああ…」 舌を尖らせて、まだ慣らしていない蜜壷に挿入する。 何度か抜き差しして、入り口を慣らした。 葛はまた、軽く達したらしい。 びくびくと身体が震える。 蜜壷もひくひくとなり、舌を締め付けてきた。 身体を起こすと、指を入れたりもする。最初は一本を入れて、様子を見た。 ぐりっと中をかき回すと、葛も反応して声を上げる。 二本目もたやすく入った。 だいぶ、ほぐれて、中は熱い。 動かさないで三本目も入れる。 つぷっと入れて、一気にばらばらに動かした。 「ああ、あんっ!」 既に、言葉を発する余裕のない葛は切なげに声をあげるしかない。 身体はうっすらと赤くなって、目はとろんとしていた。 もう頃合いかと思って、私は葛の上に覆い被さった。 蜜壷に自身をあてがう。 腰を揺らしながら、秘裂をなぞり、緩く刺激を与える。 花芽の部分をこすると、葛は高くまた、声を上げた。 何度か繰り返し、ゆっくりと蜜壷の中に己を挿入する。 そんなに大きいこともないが、質量はあるらしい。 最初の時はあまりの痛さに葛は泣いていた。 それを思い出しながら、熱く締め付けてくるのに意識を飛ばしかける。 「くっ…」 うねる中は気持ちよく、吸い付いてくるようだ。 緩く律動を始めると、葛は情欲に濡れた瞳で見上げてくる。 「…宗、明様。もっと、激しく、してもいいですから。あっ」 途切れ途切れに言われて、私は完全に理性がすり切れるのが自分でもわかった。 「…そんなことをいって。私を煽って、どうする!」 うめきながら、私は奥まで一気に突き入れた。 「あっ、ああっ!」 「つっ、くぅっ…」 激しく律動をすると、たちまち、葛は高く甘くなく。 肌を打ち付けあいながら、私は我を忘れた。 浅く緩やかにしたかと思えば、激しく深く突き入れる。 嵐のように激情に身を任せた。 「くっ!」 精を吐き出すと、頭の中に火花が飛び散る。 あまりの心地よさにくたりとなりながら、中から己をずるりと引き抜いた。 はあはあと葛も荒い息をつきながら、ぼうとしている。 近くにあった麻布で太股にまでつたってくる精や混ざった愛液を拭ってやった。 その後、三回近くはやっただろうか。 激しく抱いたため、明け方に近い刻限には葛は疲れ果てて、意識を失ってしまった。 掛け布をかけてやり、横に寝転がった。 髪を優しく撫でながら、人心地つく。 「好きだよ、葛」 そういっても、彼女は目を覚まさない。それでもいい。 私はすっきりとしながらも瞼を閉じた。次第にやってくる眠気に身を任せた。 千里の香は夜に薫る終わり
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