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一目ぼれだった。まさか自分が、この脳筋で生きてきたワタクシが!? とびっくりした。
筋肉を育てることに喜びを感じながらも、馬鹿にはなりたくないと勉強をがっつりして入った大学。コケシちゃんみたいなもっさりヘアー、がり勉眼鏡、オールシーズンすっぴん、お母さんのおさがりトレーナー、おばあちゃんが履きそうな300円で買った微妙な柄のジョガーパンツ。いやジョガパンっていうか、もんぺかな。モンスターペアレンツじゃなく、もんぺパンツ。
そんな果てしなくがっかりビジュアルで大学デビューを果たし、彼に釘付けになった。
サラサラヘアー、モデルみたいな見た目。すらっとした体、ジャケットにデニムというシンプルな格好なのに雑誌からこんにちはしたみたいな。端麗、って言葉が発泡酒以外で体現している人を初めて見た。
一週間で話題の人になった。成績トップで合格して、企業と連携した研究開発にいの一番でスカウトされたらしい。そりゃもう女の子が取り囲む。そしてヤベーレベルの塩対応で次々女の子を叩き潰すことでも有名になった。
「人としても女としても、興味ない。二度と近づくな、鬱陶しい」
すっごい一言だよ。それを睨まれる勢いで言われるもんで、泣きだす子までいる。面と向かった拒否に慣れてないからね現代っ子は。シカタナイネ。
それにしても手強い。こりゃ難しいな。見てるだけの観賞用、熱帯魚みたいなもんにしようかと思ったけど無理でした。
寝坊して遅刻ギリギリで教室に滑り込んで、空いている席に座ったら隣が彼だった。この頃になるとツンドラ王子様の隣を陣取ろうとする女子はすでにいなくなっていた。やばい近い、走ってきたから汗臭くない私!? と思ったけど、彼はまったくの無反応。
ああそっか。彼、人に興味ないんだった。嬉しいような、寂しいような。彼にとって他人とは、電柱や机のような「物」という認識なのかもしれない。
ゼーゼー息をしながら慌てて準備をするけど。焦っていたから口が開いたペンケースをエルボーしてしまって宙を舞う。
やっちまったなあ! でも大丈夫、私は三色ボールペンと擦って消せるボールペンの二本しか入れてない! ペンケースいらねえじゃん、と友人に突っ込まれるくらいだ!
彼の方。腿の上というか股間の上というか。微妙なところにゴールされるボールペン。彼の文字通りの意味での股上に手を伸ばして取るのはいかがなものか! と思っていたら。
「……」
無言のまま、すっと取って私の前に置いてくれた。
目があった。
だめ。全身を雷に打たれて爆発したかのようだった。
震えた。
「あ、ありがとう」
なんとか絞り出したその言葉。
「手突っ込まれて拾われたくない」
デスヨネ。まるで興味なさそうなその顔、目つき、声のトーンに完全に惚れた。
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