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己の行く末を問うたつもりが、明かされたのは母の死の真相である、それを、この男たちは全く悪びれていない。それどころか、『つこうてやる』などと暗に匣としてのお役目が無為なものであると仄めかしている。なんて愚かなのだろう。いや、その些細な引っかかりにも気づけぬほど愚昧だと見くびられているのは、珠の方か。
ほくそ笑む男を、珠は虚ろな目で見やった。相手は珠を心の底から木偶だと思っている。上手いこと心に深い傷を与えて話を逸らすことができたと、まだ、余裕綽々でいるのだ。
「ほれ、珠、いつもみてえに口開けて――」
「で、なんで、新しい箱が出来たいうに、わしの子まで匣にさせられねばならんのじゃ?」
自分が思う以上に低い声が出た。その声に、男たちがぴたりと動きを止めたことに驚く。ちらちらと、村長を含む周囲の男たちが、口の軽い、どうやら村長の息子であったらしい青年を咎めるように見た。
余計なことを言いおって、と目配せし合っている。それが、彼らの顔色を窺い続けた珠には、分かる。
「ああ……やっぱり、おっかあは匣を壊すように仕向けられたんじゃな……」
墨尾は言った、虐げられた珠の一族だけ血が清いままだと。つまり、珠の血筋は先祖代々、この土地で匣――いいや、慰み者として囲われ続けていたのだろう。
合点がいくと同時に、放心した様子で脱力した珠の身体を、苛立った男たちが手荒く引ん剝く。
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