Flamingo Transform(600字未満小説)

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 瞼を閉じてこんな想像をした。俺は見たこともないような異国の布をまとって、昼間からお酒を浴びながら、地平線の彼方にいるにいる桃色の獰猛な生命体を凝視するのだ。そこに時刻というものはない。だだっ広い砂場か、それとも砂浜かはわからないが、そんな空虚な空間でフラミンゴの胴体から落ちてくる細く鋭利な足をいくつも見つけては胸をときめかしたり、急激に訪れる不安に怯えてみたりするのだ。そうなるともはや将来のことや世間体を気にする人間的なところが消失していく。ただ、こうひとりごつのだ。 「あぁ、彼らのように俺も水面に唇をつけてみよう」 そうしてフラミンゴの群衆の中へと 俺は飛び込むのだ。裸足でこの地を駆けると、足の裏に感じる石や砂の感触を二度と忘れられないぐらい感じられる。あぁ、冷たいな。しかし、暖かな温情さえ感じるのだ。もう俺の唇はうるおいにみちた輝きを失うであろう。粘膜の柔らかな愛情を喪失してしまうだろう。どんどん硬くなっていく俺の唇は次第に鋭利なものへと姿を変えるのだ。はぁ、もう俺は俺よりも優れた人間たちと言葉を交わす必要はなくなったのだ。それだけで何と幸運な人生だろう!俺の口は言葉を失っていくにつれ新たな進化を遂げるのだ。俺はもう理解されることを諦めて良いのだ。諦観という名の淵に涙をこぼしすぎても構わないのだ。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!