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第1話 何人目?
なんでドアの前かなぁ……
部屋の中でやってよね。
マンションの廊下で、嶋内航が知らない女と超長いキスをしている。
こいつのせいでわたしが家に入れないとかありえないから、気にせず横を通るけど。
狭い廊下をぶつからないように、すれ違い様ちらっと横を向いた時、航と目が合った。
最低。
こいつ目開けてキスしてる。
わたしが通り過ぎる間、航はわたしを目で追っていた。
カバンから鍵を取り出した時だった。
大きな平手打ちの音が響く。
また?
「最低!」
そ-だよ。航は最低で最悪なクズなんだよ。今頃知ったの?
「もう会わないとか言っといてキスとかなんなの?」
「え? だってしたそうにしてたから」
「ホント最低!!」
なぜかドアにカギを差し込んでいたわたしまで、知らない女に睨まれる。
それでつい、女が廊下の端の階段をおりて見えなくなるまで目で追ってしまった。
女が完全に見えなくなってから、航がこちらを向いた。
「真帆、氷欲しい」
「いい加減、冷凍庫のついてる冷蔵庫を買ったら?」
「欲しい」
「そこで待っててよ。一歩も動かないで。入ってこようとしないでよ」
急いで部屋に入って、一旦ドアを閉める。
製氷器の中から適当に氷をビニール袋に入れてから玄関のドアを開けて、目の前で待っていた航に渡した。
「はい。じゃあね」
氷を渡すとすぐに玄関の鍵を閉め、チェーンをかけた。
しばらくして隣の家の玄関が閉まる音が聞こえたので、着ていたトレンチコートをぬいでハンガーにかけた。
今月に入って何人目?
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