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HAPPY BIRTHDAY MISSION
目覚まし時計が鳴ってパチリと目を開く。今日は僕の誕生日。パタパタと階段を降りるとお母さんが忙しく動き回っていた。
「お父さんは?」
「もう、お仕事行ったよ」
「今日も遅いの?」
「遅いだろうね。本当に」
お母さんは何か言いかけて口を噤んだ。言わなくても分かる。僕の誕生日くらい休めばいいのにっていうやつだ。お正月もゴールデンウィークもお盆休みもお父さんは忙しなく働いている。貧乏暇なしって口癖のように言っていて、一緒に住んでいるのにほとんど会えない。
「いいよ。どうせ、お父さん何か仕込んでるだろうから」
お母さんは困ったように笑う。僕が聞き分けいいように受け取ってるかも知れないが、そんな訳ない。僕だって二年生のとき、ブチ切れたし。
僕はお父さんが大好きなんだ。小学校に上がるまでお父さんに引っ付いて遊んでた。お父さんたら、大人のくせに鬼ごっこやかくれんぼが大好きなんだ。ゲームも子供の僕とやってむきになるし。ちょっとコンビニに一緒に行くだけで手を繋いで一緒にスキップしながら行ってたんだ。突然変わったのは僕が小学生になってからだ。お父さんが仕事を目一杯増やし出した。そうなったらお父さんと遊ぶ時間も減って僕は何だか寂しい日を暮らしていた。
もちろん遊ぶ友達はいるんだけど、友達とは一日中ずっといられる訳ではないから。お父さんと一緒にピーマン残してお母さんに怒られたかったし、お風呂で我慢比べして真っ赤になりたかったし、布団の中でお父さんの変な作り話聞きたかった。それが突然になくなったんだ。
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