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ガガガッ、ガタッ、パン
壁の動きがゆっくりになり、やがて部屋の変形は落ち着くと、リーリーは恐る恐るトイレのドアだった扉を開けた。
【な、なにこれーーー!!】
リーリーは目の前で悲鳴のような鳴き声で叫ぶ。
コンビニ『シノビマート』のおもかげは見る影もない。まるで城の中に入ったみたいだ。
リーリーはあたりをきょろきょろと見渡した。
木でできた古い城づくりなのに、監視カメラのような物が見える。ところどころに現代文明の力を感じ、とても不思議な城だった。
なにより侵入者を阻むような居たたまれない圧を感じる。
周囲の変化についていけず、リーリーはちょっと涙目になった。
こんなことではダメだ、忍者の相棒たるパンダがこんなことで負けてはいけない。
忍者の相棒として気を引き締めて、そっと木造の廊下を歩きだした。
音をたてないように、今までの修行を思い出しながら歩いていく。
しかし今までの修行でシャオランに抱っこされてばかりだったリーリーの足音は、そう簡単には消えなかった。
【(ううぅ、今度ちゃんと修行しよう)】
リーリーは自分のたてた足音にちょっぴり恥ずかしさと悔しさを滲ませる。
廊下を曲がると、リーリーは連子窓と呼ばれる外の様子を監視する窓を見つけた。
外の様子も気になっていたリーリーはぴょんと連子窓の前で跳び、格子状の窓枠につかまり、そっと頭を出して様子を窺った。
【うわあああ。高い、高いよ!】
コンビニ『シノビマート』は1階建てだったはずだ。しかし今の変形『シノビマート』は、5階か6階あるいはもっと高い建物のようだ。
シノビマートは随分と大きな変形を遂げたらしい。
そのときリーリーは、はたと気づいた。
【ここ、どこー? シャオランたちがどこにいるかわかんないよー】
嗅覚に優れたパンダだから、かろうじてシャオランの匂いは追えるだろう。しかし初めて見る城の内部にリーリーは不安を感じていた。
でも...、きっと怖がりで臆病なシャオランはもっと不安に感じているはずだ。
相棒であるリーリーがしっかりしないといけない。
【(シャオラン、ぼく頑張るよ!)】
こうしてリーリーの忍者城だいぼうけんが始まった。
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