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そんな時だった。
王子様は突然現れて、私を連れ出してくれた。
想像よりもずっと年上で、白馬ではなくよくある自動車で、連れて行ってくれたのは小さなアパートの一室。
でも、幸せだった。
王子様は私にたくさんのことを教えてくれた。
最初の頃、私は馬鹿だったから王子様の言うことがよくわからなかった。勝手な行動を取ったり、反論したり、泣いたり怒ったり。今から考えれば恥ずかしい、なんてみっともない真似をしたのだろう。
それでも、こんな私を王子様は見捨てなかった。
いつだって私を叱って教えてくれた。自分の手を痛めてまで。
足首を飾る素敵なアクセサリーまで贈ってくれて、やっとマトモになった私は彼と愛し合った。
王子様は私のことを「可愛い」と何度も言ってくれた。「雛は僕のお嫁さんで、お姫様だよ」とも。
だから、良いお嫁さんでいられるように努力した。彼は日中仕事があるから、私は彼のために家事をする。料理に掃除に洗濯に、やらなければいけないことはたくさん。失敗はダメ、だって王子様のためだから。
そして、彼が帰ってきたら毎日玄関まで迎えに行った。
「おかえりなさい、王子様!」
「ただいま、雛。今日もいい子にしてた?」
そんなやりとり一つ一つが幸福そのもの。
彼から与えられる全てが愛しかった。
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