2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
ガラスの靴なんてなくても
笑顔で告げて、母の顔をした怪物の喉を掻っ切った。ビシャリと跳ねた血もそのままに、男と医者の喉を裂く。遅れて噴き出した血が病室を赤く染めた。
一瞬の出来事。
彼らは何が起きたのかもわからないまま絶命していた。
ああ、これで少しはマシな風景になった。アルコール臭い白い部屋は気持ち悪くて仕方なかった。そんな風に思いながら、隠し持っていたナイフの血をシーツで拭う。
人間の喉を裂くのには慣れている。王子様が教えてくれたから。死体の処理だって得意になったが今はあまり時間がない。
本当は身だしなみだって整えたいけど、早く逃げないと捕まってしまう。
王子様はよく子供を攫っては殺していた。玩具にして遊ぶこともあった。
でも、私のことは殺さなかった。
私は王子様に選ばれたのだ。
血濡れの姿のまま、裸足で廊下を駆けていく。何だかシンデレラみたい。でも、魔法が解けたくらいで王子様から逃げ出した、あんな馬鹿な子とは違う。
私を見つけてくれた王子様は囚われの身。
だから、今度は私が助ける番。
会いたい人が迎えにきてくれないなら、私が向かいに行けばいいだけ。
きゅっと手を握り締めて、呟く。愛の誓いのように。
「待ってて、私の王子様」
また二人で、ハッピーエンドの続きをしましょう?
最初のコメントを投稿しよう!