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色々な物を背負いながら
「ミナ、元気でな…」
「うん。頑張ってくるよ。」
改札口を抜けた。歩いていく度父はたちまち霧のように消えていく。 少ししてホームに着いた。薄暗く、冷たい空気が張り詰めていた。5分程たって、点のような光が見えてきた。
「電車が来た、落ち着かないと…」
ミナは深く呼吸した後、目を大きく見開いて電車を見つめた。
彼女は、いつかラオスに大きな病院を立てて、お父さんに恩返しをしたい。という野望を抱いていた。
***
2035年。蹂躙されたボロボロの街、川を埋め尽くす血に塗れた死体。ラオスはカンボジアとの紛争により惨憺たる光景となっていた。
「お父さん、いつまで続くの…?」
「分からない。だが、もう少しの辛抱だと思う。」
ミナたちは、シェルターの中に身を潜めていた。母はノイローゼになり外に出ていってしまった。今では黒焦げの死体と化しているのだろう。希望の見えない日々に、涙が拭っても拭っても溢れ出た。しかし、内戦が少し収まりつつあった頃。2人はシェルターを抜けて、年季の入ったトヨタ・コロナに乗って空港行きの電車が出る駅へ向かった。父と母2人が、ミナを日本へ出稼ぎに行かせるためコツコツと貯金していたのだ。
「絶対このお金、無駄にはしないよ。」
「ああ。寂しいと思うが、頑張ってきてくれ。お前が幸せになることを願ってる」
***
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