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「だから……あの子に大事にしてって言ったんですね」
「ええ。彼には私と同じ轍を踏んでほしくありませんから」
その微笑みに胸を打たれた。この人は、なんて優しい人なのだろう。自分の大事なものを失っても、まだ誰かの幸せを願うことができるなんて。
私みたいな人間なら、少年がいつか手放すよう唆してしまうかもしれない。他人の成功を感じ取るのは、心を損なわれてしまうから。そんな行為に及ぶ時点で、とっくに自分で損なってしまっているのに。
彼は死ぬまで、こうして懺悔を続けるのだろうか。他人が貝を見つけ出すのを間近で感じながら、昔の過ちに向き合う生き方をするのだろうか。いつまでも苦しいまま、水の冷たさだけを感じて。
それは、寂しいな。
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