4人が本棚に入れています
本棚に追加
「頑張るのって怖いじゃないですか。いざ報われなかったらって思うと」
「……うん」
その言葉に少し口をつぐんでから、私は首を縦に振る。
「どうせ一生懸命やるなら、自分にとって大切なことの方がいいでしょ?」
「そうだね」
「だから、これにだったら僕のすべてを賭けてもいいっていう……そう、自分が頑張ってもいい証がほしいんです」
「なるほど……」
その考えを聞いて、私は感銘を受ける。確かにそうだ。頑張りが報われるとは限らない。まるでギャンブルのようなものだ。
どうせ全財産をベットするなら、自分にとって大切なものに対してがいい。どうでもいいものに賭けてすべてを失ってしまえば、いつまでもやりきれない気持ちが残るはずだ。
「……あれ? 見つかったら頑張ってもいい証じゃなくて、頑張った証になっちゃうような。ええと、僕の言いたいことは……うーん?」
顔を歪めて唸る少年を、私は微笑ましい気持ちで制する。
「何となく伝わったからいいよ。ありがとう」
頑張れる人間というのは、きっと彼のような人。
この少年は、こうして貝を掴み取ろうと精一杯頑張り、それを見つけてからも一層尽力を続けるのだろう。
その差をこうして感じてしまうと、とても心苦しくなる。
「お互い、見つかるといいね」
「はい!」
再び私たちは、貝探しの作業に取りかかる。
真っ直ぐな笑顔を直視できなかったのは、光を反射する水面のせいではなさそうだった。
最初のコメントを投稿しよう!