ひとなみ

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「頑張るのって怖いじゃないですか。いざ報われなかったらって思うと」 「……うん」  その言葉に少し口をつぐんでから、私は首を縦に振る。 「どうせ一生懸命やるなら、自分にとって大切なことの方がいいでしょ?」 「そうだね」 「だから、これにだったら僕のすべてを賭けてもいいっていう……そう、自分が頑張ってもいい証がほしいんです」 「なるほど……」  その考えを聞いて、私は感銘を受ける。確かにそうだ。頑張りが報われるとは限らない。まるでギャンブルのようなものだ。  どうせ全財産をベットするなら、自分にとって大切なものに対してがいい。どうでもいいものに賭けてすべてを失ってしまえば、いつまでもやりきれない気持ちが残るはずだ。 「……あれ? 見つかったら頑張ってもいい証じゃなくて、頑張った証になっちゃうような。ええと、僕の言いたいことは……うーん?」  顔を歪めて唸る少年を、私は微笑ましい気持ちで制する。 「何となく伝わったからいいよ。ありがとう」  頑張れる人間というのは、きっと彼のような人。  この少年は、こうして貝を掴み取ろうと精一杯頑張り、それを見つけてからも一層尽力を続けるのだろう。  その差をこうして感じてしまうと、とても心苦しくなる。 「お互い、見つかるといいね」 「はい!」  再び私たちは、貝探しの作業に取りかかる。  真っ直ぐな笑顔を直視できなかったのは、光を反射する水面のせいではなさそうだった。
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