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それを自分の体重が重いと受け止めた紅玉は地面に降りようとするが藍影は回す腕を解くことはしなかった。
「重くはない。軽すぎて驚いただけだよ」
現実に混乱しながらも藍影は背後の気配が焦っていることに気が付いた。彼らは藍影が尾行に気付いたことを察したようで、移動する前に捕まえようと試みたらしい。
『赤くなったり、青くなったりと忙しいですね』
頭の中に歌流羅の声が響いた。意思を共有させたのだ。
『隠遁術をお忘れなく。嫌ですが、彼らの相手はわたくしが努めますわ。とてつもなく嫌ですが』
『すまないな。できる限り、はやく帰るつもりだ』
藍影も意思を共有させる。
『大丈夫ですわ。もし言うことを聞かなければ赤龍帝をお呼びいたします』
『赤斗には私から伝えておこう。いってくる』
『いってらっしゃいませ』
そう話している間に藍影は周囲の水分を集め、体を水にするように形を心の中で思い描いた。次に空気中の水と水と化した体を混じり合わせ、遥か遠く、これから行き着く場所にも同じように水を集めた。
(集中だ。紅玉の体も水と化して、私の体と同化させるように想像しろ)
神術は想像だ。心の中で思い描く心象を具現化する。
かつて玄琅が教えてくれたことを思い出しながら、藍影は術を発動させた。
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