赤い髪の娘

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赤い髪の娘

 龍が守護する(さい)帝国。  女系継承のこの国では今ある問題が起きていた。 「ここにひとつの宝玉(いし)がある」  玉座にもたれた女帝は豊かな黒髪に指を絡ませつつ、下座に座る子供の顔を一人ひとり見つめ、最後に官吏(かんり)の手にある水晶へと視線を定めた。  中心に炎が揺らめくこの水晶は斎帝国の国宝とも言える代物。落としても、火に焚べても(ひび)はおろか、曇ることもないと噂の国宝を、集められた十一人の子供達は食い入るように見つめた。 「お前達は初めて見るだろう。常世(とこよ)の王から授かりし、この宝玉は龍が吐き出したと云われている」 「お母様、そんなことは誰だって知っている常識ですわ」  だから早く本題に入れ、と次期女帝である第一皇女が急かした。  その馴れ馴れしい言葉遣いに周囲は息を殺して、存在感を薄くする。(まつりごと)の手腕は良いが、寛容(かんよう)とは程遠い女帝が激高すれば、まず先に自分達が犠牲になるからだ。
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