洗練された神術

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洗練された神術

 ふと違和感を感じた。藍影がその違和感の正体を探るべく、背後に意識を集中させると馴染みある気配が四つ在ることに気が付いた。 (着いてくるとは思っていたが、まさか歌流羅までとは)  藍影に気付かれることを危惧しているからか玄琅と白慈が隠遁を施しているようだ。そのため、春国の民は彼らの存在に気づいていない。居るはずのない他国の龍帝の存在が知られれば、静けさを好む民達もさすがに騒ぎだすだろう。ここで話しかけるのは得策ではないと藍影は判断した。 (撒くか)  考えたら即行動が藍影のモットーだ。藍影は外見は似ていないが内面は猪突猛進の母に瓜二つ。母の性格を好ましく思っていた父と歌流羅が訂正しなかったため、そのまま大人になってしまった。 「紅玉、私の首に腕を回してくれるかい?」 「首にですか?」 「そうだ。お気に入りの場所に移動しようと思ってね」  おずおずと差し出された両手を首へと誘導し、抱きつかせる。紅玉に驚かれたが笑って一蹴し、その細い体を抱き上げた。 「?!」  あまりの軽さに驚いた。常世にきてから肉付きはよくなったはずなのに、布越しに伝わる肢体は柔らかさとは程遠く、骨にほんのわずかの肉がついているだけ。率直に言うと鶏がら。貧相。あれだけ食事には気を付けていたのに全くといっていいほど脂肪に還元されていない。 「藍影様?」  思わず固まった藍影を心配してか腕の中の紅玉が首を傾げた。 「重い、ですよね……」  まつ毛を伏せ、頬を赤らめ、恥じらう姿は可愛いがその軽さに衝撃を受けていた藍影は気の利いた一言が出せず「あぁ」だの「えっと」だのと口ごもる。
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