明るく照らす

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 ひらりはらりと舞う桜を見上げながら藍影は人に知られぬようにため息を吐く。分厚い紅蓮の絨毯の上で紅玉がそばにいる空間は尊いものだが、目の前に広がる光景はまったく真逆のものだったからだ。  酒瓶を抱え込み、酩酊状態の朱加を見て笑う玄琅と呆れる赤斗。彼らの輪に混じりながらもこちらを気にして盗み見る白慈。  更には、亡き母の墓守を務めるため隠居したはずの父であり先代青龍帝の青葉も宴に参加していた。青葉を囲うように歌流羅と春国の民が集うさまは、少し離れた場所にいる藍影からは大きな団子のように見える。 (私と紅玉だけじゃなかったのか……)  二人っきりの宴かと思いきや、ゼノは春国の民や先代青龍帝及び四龍帝の面々に声をかけていたらしい。道理で菓子作りの終わり頃に玄琅と朱加が来たわけだ、と藍影は呆れた。 「賑やかですね」  そっと耳を打つ声音に、藍影ははっと意識を引き戻す。隣を見れば、酒杯を指先で包み込むように持った紅玉が目元を綻ばせて、団子を見ていた。その頬が薄桃に染まっているのは酒のせいだろうか。 「あそこにおられるのが藍影様のお父様ですか?」 「ああ、宴に誘われてくるような人じゃないんだが、今日はどういう風の吹き回しなのだろうか」 「あの、あとでご挨拶に伺ってもよろしいですか?」 「ぜひ。私も話したいことがあるから一緒に行こう」  それにしても、と藍影はため息をこぼす。 「まさか、ここまで盛大なものにするだなんて……」 「いやはや、俺もここまで集まるだなんて思いませんでしたよ!」  笑いながら現れたゼノは湯気がたつ蒸篭(せいろ)を藍影の前に置く。 「暇なら参加して! って頼んだら人から人へ……。青龍帝の仁徳が成せる(わざ)ですよ」 「私は、こんな大勢が参加するとは聞いていない」 「紅玉様と二人きりがよかったからって拗ねないでくださいよ」 「拗ねていない」  紅玉が不思議そうに首を傾げて藍影を見つめる。その視線に気が付いた藍影は拗ねた表情を見られないように然りげ無く首を捻った。 「ほらほら、これでも食べて機嫌直してくださいよぅ」 「ゼノ様、そちらはなんでしょう?」  紅玉が蒸籠を覗き込みながら問いかける。
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