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黄金と灰色の視線が交差する。相手の心を見透かすように、ただじっと、お互いの瞳を見つめた。
「私は、私は……」
紅玉の瞳が一度閉じる。再び瞼が開くと、そこには迷いがなかった。
「……わがままを言ってもいいですか?」
「なんでも。君のためならどんな無理難題でも叶えてみせる」
藍影としては本気で言ったつもりの言葉だ。
しかし、紅玉はそこまで要求しないと首を振る。
「私は、奴婢です。皇女という身分を与えられていますが、立場は犬畜生と同等で、青龍帝であるあなた様とは違います」
違わない! そう叫ぶのを藍影は我慢する。ここで口を挟めば、また紅玉は心を閉ざしてしまうと思ったから。
「字も書けませんし、少ししか読めません。知識もありません」
ぽつり、ぽつりと紅玉は心を吐露する。
「性格も暗くて、共にいても楽しくはないです。きっと、つまらないと思うことでしょう」
紅玉はひと息つき、何気ない風を装って空を見上げた。
「私と一緒にいると、藍影様の評判を下げてしまいます」
何故? 藍影が無意識に呟くと紅玉は困ったように眉尻を下げる。
「私達は不釣り合いだから……」
でも、と紅玉は続ける。
「……私は、あなた様と一緒に生きたいと思いました」
藍影の邪魔になりたくない。
幸せになって欲しい。
でも、それでも、一緒に生きていきたいと思った。
紅玉は藍影の手を握り返すと祈るように額を押し当てる。
「もっと字を勉強して、藍影様の役に立てるよう頑張って、教養も身につけて、強く生きます」
ですから、と紅玉は藍影の手を強く握る。
「一緒に生きたいです。私も、あなた様とともに」
藍影は紅玉の言葉に胸が詰まる。紅玉の目には決意が宿っており、何よりも深い愛情が見えた。
「君の身分や過去など関係ない。私が守ると決めた。共に生きたいと願ったんだ。何があっても、離れたりしない」
紅玉の目が大きく見開かれ、頬がいつぞやみた薔薇のように赤く染まる。
「……ありがとうございます、藍影様」
桜の花びらが祝福する中、二人は互いに微笑み、手を繋ぎながら静かに歩き出した。
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