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再会
ゆらり、と体が傾いたことで恵嵐は目を覚ました。
直後、耳朶をくすぐったのは涼し気な水音だった。
「あらあら、お目覚めですか?」
どうやら自分は舟に乗せられている、と気が付いたと同時に嘲笑混じりの美声が後方から投げかけられた。振り返れば、生贄に差し出した末娘を迎えに来た女が櫂を操っているのが見えた。
「あなたは斎帝国が女帝。我が君から直接、罪過を課せられることを光栄に思ってくださいませ」
それに恵嵐は答えない。
分かりきったことだ。復讐と称して自分を搾取した臣下や民を、末娘を虐げたのだから、課せられるのは筆舌し難い処罰を受けることぐらい。
けれど、恵嵐にも矜持というものがある。背筋を伸ばして、表情を引き締めて、平然を装い、前だけを見据えた。
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