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動揺を隠しきれない様子の電話口の向こうから、聞かされたのは玲音の訃報だった……。
❖
玲音は、遺書を残しての自殺だった。
そこには深亜への想いの丈が綴られており、榛人との付き合いを知ってからは諦めようともがいていたことも記されていた。
そして、遺書はこう締めくくられていた。
『深亜、ごめんね。僕が死ぬのは深亜のせいじゃない。
僕が深亜を好きになり過ぎただけ。深亜と一緒にいられないことに、絶望しただけ。
全部、僕が弱いだけだから、自分を責めないでね』
その遺書を彼の両親から手渡された時も、同様の言葉をかけられたが──深亜は、自責の念に駆られずにはいられなかった。
葬儀に共に出席した榛人にも「お前は何も悪くないだろ」と慰められたが、深亜の心はただひとつの事実に支配されていた。
──榛人を死なせないため、玲音の想いを無下にした。
高校卒業以来、何度か玲音からのアプローチがあったのに、うやむやな態度をとっていたのだ。
ひとえに、玲音からの好意が嬉しかったからだ。それは、深亜のエゴでしかなかった。
だから、榛人との付き合いを境に、玲音との距離を少しずつ置くようにして、連絡をとったりするのも控えるようになっていた。
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