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そんな深亜のずるくて卑しい態度が、玲音を傷つけ死に追いやってしまったのだろう。
(私の……せいだ……玲音を、死なせたのは……)
榛人の死を避けようとして、玲音を死なせる羽目になってしまった。
「深亜? お前、少し休んでいいって……」
誰もいないはずの、早朝の時計店。深亜の手の中には銀色の懐中時計があった。
処分品の箱に埋もれていたそれを手にしたが、動かない。壊れているのだ。
途方にくれて立ち尽くしていた深亜に、驚いたように榛人が声をかけてきた。
深亜は、ひとつの考えに思い至って、榛人に懐中時計を差し出す。
「榛人……お願い、これ、直してくれる?」
「いや、お前……なんで急に」
「お願い!」
必死の懇願に、とまどっていた榛人は気圧されたようにうなずいた。
「解った。……少し、待ってろ」
そうして榛人が時計と向き合う間に、深亜は今までのことをすべて彼に打ち明けた。
修理に集中できないのか、時折手を止めては深亜に何か言いたげにしていたが、結局、深亜の話を最後まで黙って聞いてくれた。
「出来たぞ」
「ありがとう!」
礼を言って飛びつくように榛人から懐中時計を受け取る。ネジを巻き始める深亜に、榛人が言った。
「やり直して……どうするんだ?」
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