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じっ……と、何かを思うように榛人が深亜を見つめる。
深亜は、微笑みを返した。
「玲音が死んでから、ずっと考えてたの。
私……二人に死んで欲しくない。生きてて欲しいって。
二人のこと、好きだけど……好きだから、私が二人のうちどちらかを選ぶことで、二人のどちらかが死んでしまうのなら……もう、選べない」
言って、深亜は軽く首を振る。
「違うか。……もう、どちらも、選ばない」
手の中の懐中時計がコチコチと時を刻み出す──過去へと。
ゆがむ景色の中で、深亜はひとつの決意を抱きしめていたが、彼女は知らなかった、この時間を遡る現象に図らずも榛人を巻き込んでいたことを。
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