選ばない

4/4
前へ
/18ページ
次へ
じっ……と、何かを思うように榛人が深亜を見つめる。 深亜は、微笑みを返した。 「玲音が死んでから、ずっと考えてたの。 私……二人に死んで欲しくない。生きてて欲しいって。 二人のこと、好きだけど……好きだから、私が二人のうちどちらかを選ぶことで、二人のどちらかが死んでしまうのなら……もう、選べない」 言って、深亜は軽く首を振る。 「違うか。……もう、どちらも、選ばない」 手の中の懐中時計がコチコチと時を刻み出す──過去へと。 ゆがむ景色の中で、深亜はひとつの決意を抱きしめていたが、彼女は知らなかった、この時間(とき)を遡る現象に図らずも榛人を巻き込んでいたことを。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加