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二人からの告白
気づいた時、深亜の見上げた先の天井は実家のものだった。
てっきり、気を失った自分を見つけた誰かが両親に連絡し、心配した彼らが一人で住むアパートでなく、実家に連れ戻したのだと思った。
……病院でない点を不審に思うほど、すぐに頭が働かなかったのだ。
ベッドから起き上がった深亜は、鏡を見て違和感を覚えた。自分の肌ツヤがやけに良くて、おまけに二十歳過ぎに開けたはずの耳のピアスホールがない。
次いで起こったのは、母親の声かけだ。学校遅れるわよ、と。
❖
結論からいえば、過去に戻ったのだ。それを確信したのは、深亜の記憶に残った高校時代の数数の出来事だった。
同じように進む、毎日。繰り返される、過去。
けれども──。
高校の卒業式の後。クラスメイト複数人で行ったカラオケ。
誰かが歌う下手なヒット曲に合わせて手を叩く深亜の横で、玲音がささやいてきた。
「この後、二人で抜けない?」
透き通るような甘い声に誘われて。うららかな春の陽ざしの下、連れ出された先の遊歩道で、彼に告白されたことを思いだす。
『深亜、好きだよ。これからもずっと一緒にいよう?』
玲音の言葉通り、そのままずっと、二人は付き合っていた──榛人が死ぬ、その日まで。
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