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(そうだ……玲音と付き合ったら)
あの日、玲音からの電話で、予定よりも早く退社した。
このままではまた、榛人が死んでしまうかもしれない。それを防ぐためにも、玲音とは付き合えない。
「ごめん、用事があって」
「そうなの? 残念!」
中学高校と同じだったせいなのか、もともとの性質なのか。玲音の距離感はかなり近い。
その時も、秘密を共有するように、こつんと額を寄せられた。
後から考えれば、玲音なりの愛情表現だったのだ。当時の深亜にしたら、玲音の態度が好意なのか恋愛対象外だからこその近さなのか、図りかねるものだったが。
(でも、面と向かって好きって言われて、嬉しかった)
弟みたいな可愛らしさと、いざという時の頼りがいのある玲音が好きだった。
……恋愛感情かといえば、即答は難しい。
それは、無条件に自分を愛しんでくれる相手への信頼からくる愛情に近かったから。例えていえば、とても可愛い飼い猫のような彼だった。
とはいえ、身体の関係もあったのだから、まるでトキメキのない間柄ではなかったのも確かだ。
一瞬、慣れた体温を記憶がよみがえらせたが、深亜はそのまま、玲音との恋愛関係を進展させない道を選んだ。
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