あおいくんの秘密

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あおいくんの秘密

「いっ……てぇ。あれ?」  視界の焦点が定まると――そこは地獄でも、もちろん天国でもなかった。  ボンヤリと室内の様相が見えてくる。薄汚れた木目の天井。古びたチェスト。野暮ったい青紫のカーテンの隙間から差し込む一条の光の中に埃が踊る。俺は、粗末な木製のベッドに横たわり、かろうじて白いシーツに包まれていた。 「ええ。蘇生しましたけど……もう8回目ですからねぇ。時間操作に細胞が耐えられるのも、そろそろ限界です」  姿は見えないが、あおいくんの声がする。  ――8回目? 時間操作? なにを言っているんだ? 「そうですねぇ。いや、今回は、なかなかの逸材でしたよ。マジカルアイテムにも、すぐに慣れましたし」  彼を呼ぼうとして、思いとどまる。霞がかかったように混乱する記憶。確か、エルフの里で……あれからどうなったんだ? 「シワセーン様が見込んだ通り、稀にみる人間でしたねぇ。決して満たされることなどないのに、求めずにはいられなくて……彼を苛む無尽蔵の渇欲は、ボクのポケットが取り込んで、シワセーン様の活力(エナジー)の一部になっていたとも知らないで。全く、よく働く活力生成機(エナジーマシーン)でしたよ。フフフー」  不意に、光る存在が現れたときのことが脳裏に蘇る。『オマエのような……男を探していた』――そういうことかよ、畜生め! 「ええ。分かりました。もったいないですけど……今度ダメージを受けたときは、潰します。シワセーン様も、早く次を見つけてきてくださいよぅ?」  ゆっくりと首を捻って辺りを見回す。ベッドの端に、丸めた布が無造作に置かれていた。表と裏の両面に、沢山のアナログ時計の模様がプリントされた風呂敷だ。ああ……確かに――俺は、あおいくんの手で何度も蘇らせられてきたらしい。
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