プロローグ①

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その内、家族団欒の光景があまりに(まぶ)しくて、知らず知らずの内に視界(しかい)(なみだ)(にじ)み、(あふ)れた(しずく)は押し出されて頬を(つた)う。僕は()()(しば)り、うつむき、苦笑(くしょう)する。 戻れるなら戻りたいと────── 毎日、見るこの夢の終わりには必ずサプライズがある。母が僕を通りすぎキッチンに行く。 あまりに唐突(とうとつ)で弟は理解出来てない。 父は奥の(ふすま)へ向かい隠してあったものを丁寧に取り出す。 そうして、父と母の連携(れんけい)で、母からは6本の蝋燭(ろうそく)が並んだ誕生日ケーキと、父から包装紙(ほうそうし)に包まれたプレゼントが弟、つまり当時の僕に与えられた。 幼い僕は「見ていい?」と包装の(ふう)()けようとしていた。母は蝋燭に火をつけながら、「まだだめ」と(たしな)めて、姉は蝋燭で光輝くケーキを見つめていた。 どうやら食べることを諦めたようだ。姉は元来(がんらい)、少食であまり食べれない。 蝋燭6本に灯火がつく、父と母と姉は、あのハッピーバースデーの短い言葉を手を叩いて歌い、姉は手元にあるクラッカーを鳴らして、「おめでとう、遥斗(はると)」と言い、父も母も微笑(ほほえ)み、「おめでとう」を口にする。
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