13人が本棚に入れています
本棚に追加
その内、家族団欒の光景があまりに眩しくて、知らず知らずの内に視界が涙で滲み、溢れた雫は押し出されて頬を伝う。僕は歯を食い縛り、うつむき、苦笑する。
戻れるなら戻りたいと──────
毎日、見るこの夢の終わりには必ずサプライズがある。母が僕を通りすぎキッチンに行く。
あまりに唐突で弟は理解出来てない。
父は奥の襖へ向かい隠してあったものを丁寧に取り出す。
そうして、父と母の連携で、母からは6本の蝋燭が並んだ誕生日ケーキと、父から包装紙に包まれたプレゼントが弟、つまり当時の僕に与えられた。
幼い僕は「見ていい?」と包装の封を開けようとしていた。母は蝋燭に火をつけながら、「まだだめ」と嗜めて、姉は蝋燭で光輝くケーキを見つめていた。
どうやら食べることを諦めたようだ。姉は元来、少食であまり食べれない。
蝋燭6本に灯火がつく、父と母と姉は、あのハッピーバースデーの短い言葉を手を叩いて歌い、姉は手元にあるクラッカーを鳴らして、「おめでとう、遥斗」と言い、父も母も微笑み、「おめでとう」を口にする。
最初のコメントを投稿しよう!