13人が本棚に入れています
本棚に追加
2015年7月28日───
朝から強い風が吹き荒れて、雨がまるで不吉を呼ぶかのように暗雲と雷雲を伴った雲を密集させた。
雲々はその装いのとどまることを知らずか、辺りの暗雲と雷雲をさらに集めて引き寄せた。
こうして姿を現したのは大規模な全ての負を象徴するかのような黒い雲海の密集体。
それはまるで空に突然現れたどこかの神話に登場する化け物のようだった。
雷雲が恐怖と不安と死の旋律を奏でて、地上では安定しない危険な音色が鳴り響く。
雨粒はどれも大きく、アスファルトを強く打ち、そのさまは「怒り」や「憎しみ」を孕んでるみたいに思えた。
しかし、時に空は雨を優しく降らせてそれを「恵み」とする時もある。
だが、7月28日の空は「怒り」や「憎しみ」を地上に注いでるようで、風も無慈悲なほどに強く街々の人は通学や通勤で傘が風と雨の流れる強さに流されて一瞬で破壊された。
歩道を行き交う人がいなくなり。
虚しく雨粒が強くアスファルトを打ちつける音と道路で車が行き交う音だけが聞こえる。
その街々の片隅で小さな言の葉は懸命に命の声を上げていた。
だがその声など取るに足らないように現実は残酷にその小さな声と小さな言の葉を相殺した。
それが自然の摂理で理だと小さな懸命な命に突きつけるようで。
それが人が作りし、正義と悪を分かつことの出来る社会であり、世の中であると。
それが国や法律で作り上げた多くの余多の数え切れない犠牲から手に入れた真の平和であり、それが答えだと回答しているみたいに、弱い命は強い命の糧となりて─
──いずれ忘れられていく命の小さな灯火。
生きていた軌跡すら気づかれることのない命の行方とその定め。
最初のコメントを投稿しよう!