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しかし、住宅と魚屋の狭いスペースでは誰も発見しないだろう。
まっしてやこの天候。
きっと、その子猫は母猫や姉弟が生きていると思っているのだろう。
だから鳴くんだ。
いつも母猫は子猫を舐めてその顔を刷り寄せて「愛情」を注いだ。
母猫のお腹をまさぐるといつも「温もり」で溢れた母乳が出たし、母猫を呼べば毛繕いをしてくれた。
その子猫が鳴くと姉弟達も鳴いていた。
だから今も生きている。
母も。
姉弟達も。
でも、なんでだろう?今日は誰も答えてくれない。
だからさらに鳴くんだ。力強く懸命に、必死に母猫のいつもの「愛情」と「温もり」を求めて───
私はここにいるよ?って……
落雷がどこかで落ちたようだ。
突然の雷鳴はその子猫を恐がらせた。
必死に「みゃーみゃー」と鳴いて母猫を呼ぶ子猫。
自然と現実は心無い無慈悲な風と雨で子猫の体温を、体力をゆっくりと痛ぶるように奪っていく。
フッと母猫とその子猫と姉弟猫達に降り注がれる雨がその一帯だけ止んだ。
この狭いスペースに壁と壁で囲まれた間は幸いにも風の勢いを緩和させた。
そこで傘を子猫にかざして自身はびしょ濡れになる女児の姿があった。
女児は「聞こえたよ、キミの鳴き声。」と幼くて小さな唇で囁く。
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