モノローグ

6/8
前へ
/769ページ
次へ
そうしてまずは鳴いている子猫を拾い上げて、バスタオルで濡れているとても小さな身体を拭うように包んだ。 その子猫を女児に持たせると父親は薄く瞼を開き、「愛」と「不安」をその白く濁った瞳に宿(やど)して、腹部に視線を向けて固まる母猫の頭を撫でた。 「さぞかし必死だっただろう…。 自分の子供のために必死に我が子を見て……自分の命よりも子供を何よりも生かしてやりたかった… わかるよ。その目を見たら……。」 女児の母親は鼻を(すす)り、込み上げる哀しみに、そして、必死に一生懸命に自分の子供に母乳を与える体勢(たいせい)のまま事切れる母猫と無残(むざん)にも死んでいる5匹の子猫達を見つめていた。 父親は次々に子猫達5匹をバスタオルにくるみ、最後に母猫をくるんだ。 母猫を抱えると女児の父親は「よく…頑張った……。キミの残した命は大切に…そう、大切に育てるから…… だから……」 「ゆっくりお休み───」 女児の母親はうつむき泣いていた。 父親も泣いていた。 車の後部座席に母猫と姉弟猫達を乗せて、女児は「みゃー。」と鳴く子猫を抱えて車の助手席に乗ろうとした。 母親は後部座席で母猫と姉弟猫達の横に乗り、父親も運転席に乗った。 すると不意にカラスの鳴き声が聞こえた。 女児が抱える子猫もそれに同調(どうちょう)するように鳴いた。
/769ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加