宣告

5/5
69人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
 「自力で移動できるんですか?」  隣の並行時空-パラレル1へは、球体の構造物で向かった。なので、技術の助けなしで時空を渡れるとは思わなかった。  「ええ。私含めて管理官は全員能力者です。  向こうの未来に干渉(かんしょう)することは、こちらの過去を改変することになります。  存在が重複する以上の問題です。  干渉が歴史の事実なら大丈夫ですけど」  不思議な言葉に首を(かし)げたが、彼女は微笑むだけだ。  「これ以上知る必要はないです。  そして、願いを(かな)えれば家族や友人とは二度と会えません。  逆行時空へ行くことに、それだけの価値があるかどうか考えてください」  何も返せない俺に、寺竹管理官は更に残酷なことを告げた。  「仮に貴方がその犠牲を払ったとして……相手が受け入れてくれるとは限りません。  見ているだけだから続いたのではないですか?」  黙って帰るしかなかった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!