逡巡

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 決断できないまま、水曜日が来た。  迷いの中でも彼女には会いたい。いつもの時間に家を出て駅へ向かう。  鐘が鳴り時空が接触すると、空の向こうに列車が(あらわ)れる。  真剣に列車を見つめると、彼女が小さく手を振ったが、すぐに戸惑(とまど)う表情に変わり、(うつむ)いてしまった。  でも、手を振る彼女を見た俺は浮かれた。まだ時間はあると。  それが幻想だったことは翌週分かった。  次の週、彼女を見た俺は嬉しくて手を振ったのだ。でも、彼女は振り返すことなく、戸惑う表情だけを残して去った。  彼女が手を振ったのは、前の週-つまり今日、俺が同じことをしたからだと悟った。  律儀に返してきただけだと。  胸が痛む。このまま決断しなければ、彼女との時間は強制的に終了となる。  (どうしたら……)  両方選ぶことはできない。どちらかを(あきら)めることになる。
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