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「なぁ、最近元気ないけど大丈夫か?」
同僚に心配された俺は力なく頷いた。
管理局に行った後、いろいろ大変でさ、と同僚達に言ったり、飲みに誘われても断るから、何か問題を抱えたと思ってくれたようだ。
「……なかなか、人生大変だなって思ってる」
罪悪感を隠して返すが、言葉は本心だ。
一人の女性を好きになっただけ。時空が違う相手を……その意味を理解しても、俺は彼女に会うことを選んだ。
勝手だと分かっている。
家族が悲しむと思うと、決心が揺らぐこともある。
でも、反応が薄くなる彼女を見ると、それ以上に胸が痛む。
生まれて初めて誰かを想った。我儘と分かっても会いたくてどうしようもない。
明日は寺竹管理官が告げた日にち。
この世界での最後の数時間になる。俺は、気づかれないように会社に別れを告げた。
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